第13章 並び立つには
午後の部は一時間の昼休憩を挟んで行われる。
騎馬戦を終え、最終種目発表までの数十分。
結は緊張の糸が解れた心地を感じつつ、忽然と姿を消した緑谷を探し続けていた。
麗日と飯田と分担し、緑谷が居る可能性の高い場所を訪れていく。
控え室や会場の入り口、観客席も探したが、彼の姿を見つけることはできず、気づけば一階をぐるりと一周し終えてしまった。
もしかしたらすれ違ったのかもしれない、という思いが結の中で渦巻いた。
控え室に向かうと、麗日と飯田が既に捜索から戻っているのを見つけた。
彼らもまた、二、三階には緑谷の姿がないことを確認していた。
そして、同時刻から轟の姿も見当たらないらしい。
もうすぐ休憩時間が終わってしまう。
再び探しに行くよりも待つ方がすれ違うことなく会えるだろうと、三人は心を落ち着かせていた。
「……そういえば、私と麗日さんしか女子がいないけど、みんなどこに行ったんだろ」
「誰も行き先は聞いていないそうだ。緑谷くんや轟くんといい、休憩が終わる前に全員揃っているといいが……」
結はもう一つの違和感に気づき、周囲を見渡した。
控え室には切島や瀬呂たちの姿はあるが、女子の姿は一人も見当たらない。
マイクからの指示は待機のみで、用があるとしても結と麗日を除いた女子全員が留守にする理由が考えつかなかった。
「よかった。お二人とも戻っていましたわ」
「ど、どしたん八百万さん!? 顔色めちゃ悪いよ!?」
静まり返っていた廊下から、眉を下げた八百万と真っ青な顔色の耳郎が姿を現した。
二人は体調が悪いわけではないようだが、思い悩むほどの問題を抱えていることが伝わってきた。
「麗日、千歳、話があるんだけど……ここじゃ落ち着かないからさ、ついて来てくれない?」
「わ、わかった。飯田くん、あとはお願いしてもいい?」
「もちろんいいが、なるべく早く戻ってきたまえ! 二分前……いや、五分前行動を心がけるように!」
時計の刻む音に急かされるようにして、四人は部屋を後にする。
不安が残るまま、八百万と耳郎の背中を見つめながら廊下を進んでいった。