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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第2章 本気の裏側


 少し遅れて走り終えた瀬呂は、息を切らしながらもすぐに結の元へと駆け寄る。
 呼吸がまだ乱れていたが、予想外の記録を出した結に対する驚きを隠せない様子が見て取れた。


「千歳っ、お前、速すぎるって……! 七三眼鏡とほぼ変わらねーじゃん!? 自慢してた俺が恥ずかしくなってきたわ……」


 瀬呂の戸惑いと恥じらいが混じった声に、結は一瞬きょとんとする。
 彼の言う「七三眼鏡」が誰を指しているのかを思い出すのに、わずかに時間がかかった。
 同じクラスで眼鏡をかけているのは飯田の一人しかいない。
 それに気づくと、穏やかな笑みが結の唇に浮かんだ。


「瀬呂くんの個性もかっこよかったよ。戦いも、救助でも大活躍しそうだね」
「……優しさの塊かよ!」
「だ、大丈夫?」


 瀬呂は肩で息を整え、感動の声を上げると、目元に腕を押さえつけてしくしくと泣き始めた。
 結はそれが泣き真似なのだろうと頭の片隅で考えながら、彼の肩にそっと手を伸ばす。
 優しくさすろうと、指先が触れた。


「戯れる時間があるなら、さっさと次の種目を測りに行け」


 突然、冷ややかな声が響き、二人の和やかな空気が瞬時に断ち切られた。
 相澤の苛立ちを含んだ声に瀬呂は即座に泣き真似をやめ、結の右手も素早く下ろされた。

 結は慌てて謝罪の言葉を口にして、瀬呂もその後に続いた。
 二人は第二種目目である握力測定を行うため、体育館へと足を急がせた。


 体育館の入口で切島と軽く会話を交わした後、結は周囲に人が少ない場所を見つけて握力計を手に取った。

 左手と右手、それぞれにパワー系の個性をイメージしながら、左右交互に二回ずつ測定する。
 記録が表示された画面には堂々と百の位が映し出されていた。
 結は横目で結果を確認して、握力計を元の場所に戻した。


 その後も立ち幅跳びや反復横跳びなどの種目を行ったが、どの種目でもトップの記録は出なかった。
 結の記録は全て三番目から六番目の間に収まり、ささやかな安堵が胸に広がっていた。


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