第13章 並び立つには
「……おかしいと思った……先生が言い忘れるわけないし……」
今になって恥ずかしさが急に押し寄せ、控え室に戻って着替えたい気持ちが結の胸を支配していた。
だが、最終種目の発表が間近に迫るタイミングで身勝手な行動を取ることは許されなかった。
「千歳、あとでアイツらボコそう。ウチも手伝う」
「お、落ち着いて耳郎さん……峰田くんはともかく、上鳴くんが本戦に参加できなくなっちゃう……」
「それまで時間空くし、張り詰めててもシンドイしさ! いいんじゃない!? やったろ!!」
「透ちゃん好きね」
耳郎のプラグ状の耳が互いに重なると、ばちばちと音を立てる。
その音は怒りを如実に表していた。怒りに燃える耳郎を宥めようと、結は優しく抑えようと努めた。
一方、葉隠はポンポンを振り回し、楽しさに委ねるように振り切った様子だった。
その無邪気さが、周囲に少しだけ明るさを取り戻させたようにも見える。
しばらくして、生徒たちが全員集まると、会場の明るい雰囲気が一瞬にして緊張感に包まれていく。
そんな張り詰めた空気を切り裂くように、マイクは高らかに声を上げ、最終種目の説明を始めた。
レクリエーションを終えると、進出四チーム、総勢十六名からなるトーナメント形式の戦いが行われる。
一対一の真剣勝負。
勝っても負けても、これで最後だ。
昨年の体育祭も、今年と同じくトーナメント形式で行われていた。
種目の形式は異なるが、真剣勝負で決着をつけるという流れは変わらない。
生徒たちは映像越しの体育祭の様子を思い起こしながら、心の中でそれぞれの戦略を練っていた。