第13章 並び立つには
『最終種目発表の前に、予選落ちの皆へ朗報だ! あくまで体育祭! ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ!』
休憩時間が終わり、会場には再び生徒たちが集まり始めていた。
ざわめきに包まれた空気に少しの安堵が広がる。
チャンスを逃した生徒たちも、まだ楽しむ場が残されていると知って、心が少し軽くなっているようだった。
『本場アメリカからチアリーダーも呼んで、一層盛り上げ……ありゃ?』
『なーにやってんだ……?』
楽しげなマイクの声が止み、相澤の視線が七人に向けられた。
突如、会場に異様な沈黙が広がっていく。
観客の視線も次々にその方向へ注目し、耳に届くのは本物のチアガールの応援のみ。
『どーしたA組!?』
「峰田さん、上鳴さん!! 騙しましたわね!?」
チアガール姿の少女たちに、周囲の視線が針のように刺さる。
声を張り上げた八百万の言葉には、普段の彼女からは想像もできないほどの鋭さが込められていた。
それにも関わらず、当の本人たちは全く気にしていない様子で「ひょー!」と得意げに謎の声を上げ、誇らしげに親指を立てた。
どこか狂気じみている喜びが伝わる。
「何故、こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私……」
がっくりと肩を落とした八百万の背中を、優しく宥める麗日。
その隣では、羞恥心に耐えきれなくなったのか、顔を赤く染めた耳郎がポンポンを地面に叩きつけていた。
一方、峰田と上鳴は次々に視線を這わせ、舐めるように一人ずつ見つめる。
しかし、ある一人の姿を目にした瞬間、態度が急変した。
頬の赤らみが引き、瞳に困惑の色が宿る。
「おいおい、千歳……? なんで腹閉まってんだよ、出せよ……!?」
「チアガールといえば腹チラ! 腹チラといえばチアガールじゃん!?」
「偏見ヤメロ」
峰田と上鳴の下品な声が響く中、彼らの視線は腹を隠す衣装を纏う結に向けられた。
結は虚ろな目で明後日の方向を見つめながら、ゆっくりとポンポンを振り続けている。
おぞましい視線に気づくことなく、その場に立ち尽くしていた。