第13章 並び立つには
結と麗日が呼び出されたのは、控え室からさほど遠くない部屋だった。
女子更衣室の看板を横目に扉を開けると、控え室よりもやや狭い部屋の中には姿を消していた女子たちが全員揃っていた。
丁寧に扉を閉めた八百万は、全員を手招き、静かに話し始める。
その表情は明らかに困り果てたものだった。
「……お、応援合戦? みんなでチアガールの服着るん!?」
「ええ。そのような言伝を相澤先生から預かったと、上鳴さんと峰田さんが……何かお聞きしていませんか?」
「ヤオモモ、千歳の顔見て」
「聞いてない……なんて……? チアガール……?」
呆然と立ち尽くす結に、耳郎は指しながら苦笑いを浮かべ、芦戸は「顔真っ青だよ千歳ー?」と顔を覗き込む。
情報を整理するには時間が足りず、頭の中に絡みついたモヤを振り払おうと、結は頭を軽く左右に振った。
「き、聞き間違いじゃなくて? 本当に?」
「ウチも同じこと思ったけどさ……」
耳郎の言葉に、結は今にも倒れてしまいそうなほどの衝撃を受けた。
衣装を着ることに少しばかり抵抗はあるが、引っかかっていたのは、相澤が応援合戦の話を事前に伝えなかったことだった。
昨夜、体育祭の話題の際に、種目の内容には一切触れられなかったが、全体の流れや休憩時間については正直に教えてくれていた。
衣装にも力を入れる応援合戦となれば、それなりの覚悟が必要だと察してくれるはずだ。
そんな相澤がクラス全員に話さず、峰田と上鳴にだけ伝言を預けた。
その違和感が結の中から消えることはなかった。