第13章 並び立つには
「麗日、千歳、ちょっと話があるんだけど……ここじゃ落ち着かないから、ついて来てくんない?」
「わ、わかった。飯田くん、あとはお願いしてもいい?」
「もちろんだが、なるべく早く戻ってきたまえ! 二分前……いや、五分前行動を心がけるように!」
時計の刻む音に背を押され、四人は部屋を後にした。
不安を抱えたまま、結は八百万と耳郎の背中を追い、廊下を進む。
たどり着いたのは、控え室からさほど離れていない一室だった。
女子更衣室の看板を横目に扉を開けると、これまで姿を見せなかった女子全員が揃っている。
八百万は静かに扉を閉め、皆を手招きすると、困り果てた表情のまま、ゆっくりと口を開いた。
「……お、応援合戦!? みんなでチアガールの服着るん!?」
「ええ。相澤先生からの伝言だと、上鳴さんと峰田さんが……。お二人は、何かお聞きになっていませんか?」
「ヤオモモ、千歳の顔見て」
「聞いてない……なに……? チアガール……?」
「顔、真っ青だよ千歳ー?」
呆然と立ち尽くす結を、耳郎が指さしながら苦笑する。
芦戸も身を寄せ、顔を覗き込んだ。
結は情報を咀嚼しきれず、頭にまとわりつく靄を振り払おうと、軽く首を振る。
衣装を着ることに抵抗がないわけではないが、胸に引っかかっていたのはそこではない。
相澤が応援合戦の件を事前に伝えていなかったことだった。
昨夜、体育祭の話題になった際、種目そのものには触れなかったものの、全体の流れや休憩時間については素直に話してくれた。
衣装まで用意する応援合戦となれば、それなりの心構えがいると察してくれるはずだ。
クラスへ告げず、峰田と上鳴にだけ伝言を預けた違和感が、どうしても消えなかった。