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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第12章 譲れない戦い


 残り時間は約一分。
 轟は冷静に、確実に勝利を収めるため、周囲を氷で囲んでいた。
 彼の目は閉じ込められた空間の中で、奪う機会をじっと狙っている。
 緑谷たちは常に轟の右手、氷を放つ手を警戒し、少しずつ左側へと移動していた。

 しかし、轟にとって、短時間で氷を放つことにはリスクが伴う。
 仲間の飯田や上鳴を巻き込んでしまう恐れがあるため、焦らずにその瞬間を待っていた。
 周囲の温度が低下し、氷が冷たく輝いている。


「獲れよ轟くん!」


 その一言が発せられた瞬間、戦況は一変した。

 飯田が「レシプロバースト!」と鋭く叫び、轟のチームが一斉に動き出す。
 瞬く間に緑谷たちを追い抜くと、四人のすぐ後方に回り込んだ。
 まるで猛獣が獲物を狙うかのような圧倒的な速度で、目で追うことすら困難だった。


 一瞬の隙をついて、轟は緑谷のハチマキを奪い取った。
 さらに、他の三人のハチマキも、轟の手に次々と渡っていく。
 
 緑谷チームの勝利の光は完全に消え去った。
 場内に響く歓声と静まり返った四人の間には、決定的な差が生まれていた。


「突っ込んで!」
「他のポイントを狙いに行く方が堅実では」
「ダメだ! ポイントの散り方を把握できてない! ここしかない!」


 焦燥感が緑谷の心を支配する中、その意志は次第に強固なものとなった。
 しかし、常闇の表情には依然として不安が色濃く残っている。
 周囲の状況は刻々と変化し、四人の勝敗は一瞬の判断にかかっていた。


「よっしゃ! 取り返そうデクくん! 絶対!」
「だが、上鳴がいる以上――」
「大丈夫。行こう、常闇くん」


 緑谷の決意に応え、麗日は力強く後押しした。
 そして、不安を吹き飛ばすかのように常闇は頷き、騎馬はスピードを上げる。
 結は右手に力を込め、突破口を作ろうと奮闘していた。


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