第13章 並び立つには
「つーかテメェ、半分野郎に宣戦布告されてたな?」
「半分……轟くんのこと?」
「一位になんのは俺だ。どいつもこいつも言う相手を間違えやがって」
「……もしかして、私が決勝まで勝ち残ると思ってる?」
ズカズカと進んでいた歩みが止まった。
後ろの襟元を掴んでいた手が離され、正面から再び掴まれる。
どういうことだ、と言いたげな視線が結に刺さった。
「私は轟くんや緑谷くん、爆豪くんには勝てないよ」
「あ?」
「上を目指すって言ったけど、もし次がトーナメント形式で、最初から君と戦うことになったら私はどんなに頑張っても予選敗退だろうし」
「ハッ、実力で勝てねェから諦めてんのか?」
「……そうだね」
「ふざけんじゃねェ!」
音を立てて結の背中が壁に当たる。
突然の大声に鼓膜と頭、そして叩きつけられた背中にビリビリとした痛みが走った。
「負けることしか考えてねぇテメーに勝ったヤツと戦うだァ? 俺が獲るのは完膚なきまでの一位だ……! 本気で戦う気がねェなら最後まで勝ち残ってんじゃねーよ!」
結は片耳を押さえながら爆豪を見上げた。
本気、と小さく呟いた声に揺れる瞳。
「……ごめん」
一位を目指す爆豪と、競い合う緑谷と轟。
障害物競走、騎馬戦に惜しくも敗れてしまった者。
皆がこの体育祭で本気で挑む中、結はその輪に入れなかった。
手を抜くわけにはいけない、負けるわけにはいかない。
だが、上を目指している者の邪魔はできない。
個性把握テストや戦闘訓練時も誰かの努力を踏みつけてしまうのではないだろうかと、複雑な気持ちが渦を巻いていた。
競い合って得た一位は結にとって喜べるものではなかった。