第12章 譲れない戦い
「か、体が動かねぇ……!?」
「作戦失敗だ! 追え!」
二騎を置き去りにし、四人の騎馬は麗日の個性で荒れる地上から距離を取った。
途中、個性“イヤホンジャック”の耳郎響香が、プラグ状の耳を伸ばして足止めを仕掛けたが、常闇の黒影が即座に弾き返していた。
「常闇くんの全方位中距離防御! すごいよ、かっこいい!」
「選んだのはお前だ」
「それに、千歳さんの個性で離れた相手の動きも止められるし、麗日さんの個性で空中に逃げれば地上より安全に時間を稼げる! すごいや、みんな!」
「へへ、照れるやん……」
「相変わらず、褒め上手だね」
常闇は黒影に死角の警戒を任せ、結と麗日は周囲の気配を確認する。
空中に浮かぶ間、耳郎以外に追ってくる様子はなかった。
やがて麗日が「着地するよー!」と声を上げ、指を合わせて個性を解いた。
『まだ二分も経ってねぇが、早くも混戦! 各所でハチマキ奪い合いだ!』
「奪い合い? 違うぜ、これは……一方的な略奪よお!!」
「障子くん!? あれっ、一人!?」
緑谷たちの視線の先を駆けていたのは、障子目蔵の一人のみだった。
個性の“複製腕”で肩口から生やした触手を伸ばし、背中を包み込んで前進している。
しかし、その様子には明らかな違和感があった。
障子の周囲に仲間の姿はなく、聞こえてきた声も彼のものではなかった。
「一旦距離を取れ! 複数相手に立ち止まってはいかん!」
「わっ、何!? 動けんし、取れへん!」
「これ、峰田くんの個性……!?」
麗日の靴裏に紫色のボールがぴたりと食らいついていた。
小さな衝撃のあと、結が左肘に目をやると同じボールが張り付いていた。
強力な粘着力を誇る“もぎもぎ”の個性。
一度掴んだものを離さない特性を持つボールに、二人は捕らわれた。