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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第12章 譲れない戦い


 賑やかな会場の中心から少し離れた場所では、一部の地面がやけに水浸しになっていた。
 不自然に見える水たまりは、緑谷の足元を中心に広がっている。
 彼の隣には、先ほど轟と話していたときには見かけなかった、明るい表情を浮かべる麗日がいた。


「緑谷くん、麗日さん。一緒に組まな……わっ」
「千歳さんまで!! 良いの!?」


 緑谷は壊れた蛇口のように涙をぼろぼろと流し始めた。
 水浸しの原因は、彼から止めどなく溢れ出る涙だったようだ。
 緑谷の声は高揚と感激で震え、麗日も嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
 結は降りかかる涙を腕で拭いながら、彼らのもとに近づいた。


「轟くんや切島くんと話していたから、もう組み終わってるのかと思って……」
「その二人に誘われたけど、どちらも断ったよ」
「こ、断ったん……!? でも、やったねデクくん! 千歳さんも来てくれたし、勝てるよこれ!」


 結と麗日は大きく腕を振って握手を交わした。
 麗日の弾けるような笑顔が、戦いへの不安を和らげてくれるかのように感じていた。

 騎馬戦には最低でも二人、最大で四人の仲間が必要だ。
 結が加わることで緑谷のチームは三人になるが、強豪チームに対抗するには戦力が不十分だった。
 この三人で騎馬を組む理由は明白で、どんなに優れた個性を持っていても他のクラスたちの個性や戦略が未知数である以上、少しでも意思疎通が取れる仲間と組むのが最善の策だ。


「実はもう一人、飯田くんを誘ったんだけど、断られちゃって……」
「飯田くんが? あ、轟くんと一緒にいるんだ」


 視線を向けた先では、飯田が真剣な表情で轟、八百万、そして上鳴と話し込んでいた。
 A組の中でも屈指の実力者たちが集まるこのチームは、戦略的にも非常に有利だ。
 騎馬戦のルールを理解し、適切な行動を取るのは四人にとって容易なはず。

 咄嗟の決断力と実力、何より個性の扱いにおいては結よりも轟が上手だった。
 圧倒的な存在感と、力を秘めた個性。
 彼に人が寄りつく理由は、すぐに察しがついていた。


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