第11章 備えあれば
『さあ、続々とゴールインだ! 順位などは後でまとめるから、とりあえずお疲れ!!』
再び歓声が場内を満たした。
熱気が重なり合い、空気はさらに温度を上げていく。
走り終えた生徒たちの肩が大きく上下し、汗が砂塵に紛れて光った。
結の呼吸も荒く、胸の奥が脈動に押されるように痛んだ。
右手には重い疲労が沈んでおり、握力の抜けていく感覚があった。
停止した対象の解放だけでも負担は大きい。
「……あと二戦。気を抜かないようにしないと」
壁に背を預け、ゆっくりと目を閉じる。
右手の指先はまだ痺れてはいないが、思いどおりに動かなかった。
悔しさと焦りを押し込むように、そっと握りしめる。
深く呼吸を整え、最後の一人がゴールするのを待った。
「ようやく終了ね。それじゃあ、結果をご覧なさい!」
ミッドナイトが軽やかに宣言すると、電光掲示板に予選通過者の名前が並ぶ。
レースを終えた生徒たちは皆、疲労を隠しきれなかった。
一位は異例の追い上げを見せた緑谷。
二位が爆豪、三位が轟。
結の順位は飯田に続く五位だった。
四十二名の通過者の中にはA組全員の名がそろっている。
「さーて、第二種目よ! 私はもう知ってるけど何かしら!? 言ってるそばから――コレよ!」
掲示板に大きく映し出されたのは“騎馬戦”の文字。
上位ほど標的となり、下位ほど牙を剥く。
下克上の乱戦が始まろうとしていた。