第12章 譲れない戦い
「ごめんね。誘ってくれたのは嬉しいけど、一緒に組みたい人がいるから」
「組みたいヤツってのは切島か?」
チーム決めと交渉の時間はわずか十五分。
予選を通過した四十二人は騎馬戦に向け、各々の仲間を探し回っている。
結もその一人で短い間に三度目の勧誘を受けたが、静かに断り続けていた。
誘いに来た者は結の個性を見込んでいたのか、あるいは親しい間柄だからと近づいたのか。
これまでの相手は引き止めることなく立ち去っていったが、目の前の少年は諦めなかった。
「違うのか。じゃあ、上鳴か?」
「ま、待って。どうして二人の名前が出てきたの?」
「どうしてって、仲良いだろ、お前ら。さっきも話してたよな」
淡々とした口調に、結は戸惑いを隠せなかった。
轟はちらりと二人の姿を確認するように横目で追うと、無関心な声色で話を続ける。
周囲の生徒たちはすでに交渉を終え、仲間を揃えたチームが次々と形を作りつつあった。
「轟くんは強いから、同じチームになれたら絶対に勝ち上がれると思う。でも、それだと勝負がつかないけど……」
「勝ち負けは最後でもいい。協力戦なら組んだ方が戦力になるし、点数稼ぎもしやすいからな」
この種目はただの体力勝負ではない。
予選の順位に応じて、参加者にはそれぞれ異なるポイントが割り振られている。
下位の者は少なく、上位の者ほど多くのポイントを持つ。
結は五位で百九十ポイント、轟は二位で二百五ポイントだ。
そして、順位に応じて振り分けられたポイントが各自の戦略に大きな影響を与える。
結と轟が組めば、二人の合計ポイントは三百九十五。
これだけでも他のチームより圧倒的に有利な立場に立てることは明らかだった。