第11章 備えあれば
突然、背後から声がかかり、結は慌てて振り返る。
そこには、すぐ後ろに迫っている飯田の姿があった。
『おおっとォ!? 飯田が千歳を抜いたァー!! 一位の次は四位争いか!? あちぃなA組!!』
「やられた……!」
結の唯一の弱点は、複数の停止を解除する際に時間がかかり、停止できる数は限られていることだ。
彼の足元には地雷が埋められていた痕跡があり、同じ道を通ってきたことに気づいた。
飯田は結を追い越し、数少ない地雷を避けながらスタジアムへ続く道を全速力で駆けていく。
ゴールが目前に迫る中、結は飯田を抜かすのは難しいと悟っていた。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
右手に力を込め、飯田の個性をイメージする。
利用されたからには、自分も利用し返す必要がある。
足裏から風圧を生み出し、飯田の後ろ姿を追いかけた。
『――さあ、続々とゴールインだ! 順位などは後でまとめるから、とりあえずお疲れ!!』
スタジアムの歓声が再び響き渡り、観客席の熱気は一段と高まっていた。
そんな中、結は息を整えることで精一杯だった。
競技で消耗した体力に加え、停止の解除後に他の個性を使用したことで結の体力は限界に近づいていた。