第11章 備えあれば
「俺が一位になる」
「絶対やると思った!!」
即座にクラスメイトの声が上がる。
圧倒的な自信と揺るがぬ覚悟。
それは、これから始まる戦いへの宣戦布告に他ならなかった。
「調子に乗んなよA組!」
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」
爆豪の宣言を受けて、他クラスから非難の声が飛び交う。
飯田は「何故、品位を貶めるようなことをするんだ!」と眉をひそめたが、爆豪は意にも介さない。
騒ぐ群衆に対して、親指を下に向け、さらに首を切る仕草で返していた。
「それじゃあ早速、第一種目行きましょう! 毎年ここで多くの者がティアドリンク! 運命の第一種目、今年は――コレ!」
ミッドナイトが指し示した電光掲示板には“障害物競走”の文字が鮮やかに浮かび上がった。
スタジアム外周を巡るおよそ四キロのコースには、多彩な難関が待ち構えている。
全十一クラスが同時に走り、予選を勝ち抜けるのはわずか四十二名。
コース内ではあらゆる個性の使用が許され、前へ進むための選択が問われる。
まさに実力そのものが試される競技だった。
重々しい音を立てて門が開き、第一の信号が赤く灯る。
生徒たちは緊張を胸に、次々とスタートラインへ並んでいく。
結も列の中で深く息を吸い、目を閉じた。
そして、数日前に相澤と山田から掛けられた言葉が甦る。
今日のために温存してきた力を、ついに解き放つ時だ。
二つ目の信号が点灯し、三つ目も赤に染まる。
張りつめた空気が肌を刺すと、すべての信号が一斉に緑へ切り替わった。