第10章 気になるあの子
「同じクラスの、轟焦凍」
「……と、轟くん?」
瞳は半分眠たげで、瞬きもおぼつかない。
しばらくして、意識が少しずつ現実に戻ったのだろう。
結のぼんやりとした視線が焦点を合わせ、数秒後にはっとして上体を起こした。
「う、嘘……ごめん、勘違いしてて……!」
声は震え、頬が赤く染まる。
慌てて布団を引き寄せ、口元まで覆い隠す。
恥ずかしさが全身を駆け巡るのが見て取れた。
そんな仕草に、轟はふっと鼓動が速くなるのを感じた。
「聞かなかったことに、してほしい……」
布団に埋もれそうに小さく、か細い声だったが、轟にははっきりと届いた。
何も言わずに、彼は再び椅子に腰を下ろす。
隠れた横顔を見つめながら、最初に聞こうと思っていた疑問ではなく、ふと浮かんだ別の疑問が口をついて出た。
「……お前って、寝相悪いんだな」
「え? 寝相……?」
結の声は裏返り、驚きで目を見開いた。
頬はますます赤みを増し、火照っているかのようだった。
轟の言葉の端にわずかな笑みが含まれていたが、結は気づくことはなかった。
「も、もしかして、ずっと見てたの?」
「いや、見てねぇけど、リカバリーガールが言ってたから」
「リカバリーガールが……!?」
結の顔はまるで沸騰したお湯に飛び込んだかのように、一瞬で火照った。
どうしていいかわからない様子で、頬に残る熱さは収まらない。
心の中で何度も整理を試みるが、思考はまとまらず、気持ちはますます高ぶる一方だった。
そんな姿を見て、轟は表情を和らげ、リカバリーガールがここにいない理由を説明した。