第2章 本気の裏側
「自然災害、大事故、身勝手な敵たち、いつどこから来るかわからない厄災。日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎だな」
容赦のない言葉が生徒たちの心に鋭く刺さる。
甘い期待を抱いていた者たちの表情から次々に笑みが消えていく。
想像以上に厳しい現実をようやく実感し始めていた。
「これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。"Plus Ultra"さ。全力で乗り越えて来い」
相澤は人差し指を曲げて、ニヤリと笑う。
彼の挑発に生徒たちは簡単に乗せられた。
一つ目の種目は50メートル走だと告げられ、生徒たちは指示された場所に移動していく。
結も切島の後を追って歩き出そうとした瞬間だった。
「千歳、ちょっと来い」
突如、呼び止められた結はぴたりと足を止めた。
振り返ると、小さく手招きをしている相澤と目が合う。
胸の奥で小さな不安が広がる。
なぜ呼ばれたのか、理由は全く見当がつかなかった。
「ごめんね、先に行ってて」
「おう! 向こうで待ってるな!」
結は同じく立ち止まっていた切島に声をかけた。
不安げな表情から笑顔を取り戻すと、切島は軽く手を振ってこの場を離れていく。
進行の妨げにならないよう、結は相澤の元に駆け寄った。
遠くでは他の生徒たちが50メートル走の準備を始めていた。
「先に言っておく。このテストは個性を最大限に引き出して全力で取り組め。いいな?」
「全力で……?」
その言葉に結は少し戸惑いつつ、小さく問い返す。
相澤の鋭い目は容赦なく結を見据えていた。