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異世界転生したらゲームの悪役令嬢でした

第17章 足掻く者に蓋をする


ある日のこと。

何処からか騒がしい声が聞こえて来た。アルと廊下の曲がり角を曲がった先に見えて来たのは、皇子とアリオンとゼフとの遭遇。

ゼフに対して、少しも容赦のない物言いをしているのはアリオンだ。周りのギャラリーたちは、そのやり取りを興味深そうに見ているだけ。

なのに、アルは通常運転で声を掛けた。私の手を引いたまま。

「こんな場所で何やってんだ?」
「アルベルトか。別に大した事じゃない。大馬鹿者が馬鹿な事を言っているだけだ。」
「酷い言い草じゃないか。何で、お前にそこまで言われないといけないんだ。」

激怒しているゼフに反して、アリオンはどこ吹く風だ。

「ならば逆に問うが、お前の何処にクラウドに見合う何があると思った?勉学も平凡、剣術も平凡。私にもクラウドにも納得させる何かあるのなら言って見ろ。」

アリオンは皇子の筆頭従者だ。頭もいいし、剣術も申し分ない。最大限に皇子の右腕として働いていると言える。

「もう一つ付け加えるなら、素行も認められる要因がない。その意味、分かるよな?お前では、クラウドに相応しくないと言っている。」
「お、お前は心から人を好きになった事がないからそんなことが言えるんだ。私はただ・・・。」

アリオンは蔑んだ目をゼフに向けた。

「だから、お前は大馬鹿者だと言っているんだ。貴族に名を連ねるのなら、家の決め事に従え。それが出来ないのなら、それなりの力を示せ。何もしないで文句だけが一人前のヤツに、何が出来ると言うんだ。」
「相手にとっても、迷惑以外の何ものでもなかっただろうな。あの令嬢からすれば、ただのとばっちりだ。」

アルがいきなり口を挟んだ。

「う、五月蝿いっ!!女の尻を追いかけ回す事しか出来ない腰抜けに、とやかく言われたくない。」
「お前はアルベルトを腰抜けだと言うが、私と並ぶ知識の深さと私以上の剣術を嗜んでいるぞ。」
「こんなヤツが?冗談も休み休みに言え。誰がそんな事を信じるか。」
「ならば、対峙してみるか?」

ニヤリと笑ってそんな提案をしたのは、皇子だった。皇子はあの剣術大会を観戦している。私だって、負けるとは思っていない。でも、心配はする。

「私が?あの程度のヤツを私に宛がうなんて、どういう見解なんだ?」
「そう怒るなよ。アルベルトだって、腰抜けなんて呼ばれるのは不名誉だろう?」


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