第18章 帰国
しかし、タダで転ばないのがアルだ。満面の笑顔を浮かべては、「そうですか。それは、おめでとうございます。」と、返したそうだ。アルは基本的に他人に興味がないからそんなものだ。笑顔を浮かべただけでも、気遣ったと思われる。
あの後、エリシアは同じ子爵家の子息と恋に落ちて・・・何故か、アルは子息をダットン家に婿入りさせようとした。どうやら、恒例になりつつある独り占めをしたかったのだと思われる。
しかし、条件的に無理だったので、エリシアはこの国に嫁入りすることになった。私はかなり喜んだ。アルは仏頂面だったけれど。
周りも年齢的に、伴侶探しが大変そうでアルに言い寄る令嬢もいなくなった。本当に嬉しい。
モーリスとセーランの婚約者となった王女たちも紹介してくれ、同性の友人が増えて嬉しい限りだ。残りの学園生活は順調で穏やかな毎日だった。
モーリスが立太子した事で、クラウドからの支援もあって幸先は順調らしい。流石、クラウド皇子。いい仕事をしてくれる。
さて、私たちはと言うと・・・卒業まで後一ヵ月。そして、私のお腹は立派に育っていた。
「アルベルトが我慢なんて出来る訳がないよな?」
「俺もそれに一票。でも、アルベルト。フェリシア嬢だけじゃなく、アルベルトの子でもあるのだから大事にするんだぞ?」
「親としての責は負う。だが、私は何よりもフェリシアを選ぶ。私の父上もそうだったからな。」
「流石、クライン家だな。」
呆れた様なモーリスと、それでこそと笑っているセーラン。
子は男の子だった。産まれた姿を見て、私は遠い目をした。アルに瓜二つの子は、きっとクライン家血筋として同じ性癖なのだろうと。
でもね、私はアルと出会えて幸せだったし、今も凄く幸せだ。ゲーム通りの王子と出会わなくて本当に安心したし、ずっと私だけを愛してくれるアルが私も大切だ。
「・・・ってことで、身体も問題ないと診断されたんだよな?つまり、今晩から夜伽再開だ。」
こんな風にアルに溺愛されて、これからも執着されてはアルに依存していくのだろう。
「お、お手柔らかに。」
「無理。屋敷に戻ったら、私の気が済むまで。次はフェリシアに似た女の子がいいな。それでも、私が愛おしいと思うのはフェリシアだけだが。」
こんな風に、アルに殺し文句を言われ私もアルという沼から抜け出せないのだと思う。
おしまい