第17章 足掻く者に蓋をする
面倒そうな顔をしているアルを見たゼフは、何を勘違いしたのか受けて立つと言った。そして、何を血迷ったのか爆弾発言を口にしてしまった。
「私が勝ったら、お前の婚約者を私に渡せ。まぁ、他国とはいえ家柄も申し分ないし裕福だと聞いているからな。」
あぁ、余計な事を・・・。提案した皇子ですら、頭が痛いのかこめかみを押さえている。本当に余計なことを言ってくれたものだ。
「あ、あの・・・フェリシア嬢、その・・・申し訳ない。」
「キャサリンにもこの事を聞いて貰いますからね。」
目を皿にして皇子に言えば、顔色を青くした。ちょっとくらい、お仕置きされればいいのよ。
アルは・・・静かに大激怒していた。きっと、完膚なきまでに叩きのめされるのだろうな。でも、可哀想とは思わない。
「私が勝ったら、貴様にはクラウドの従者を辞めて貰おう。いいよな?クラウド。」
「それはいい提案だな、アルベルト。私も賛成だ。クラウドもそう思うよな?」
大絶賛のアリオンに、青い顔色の皇子。力なく頷く。
「ク、クラウド様、そんな事を簡単に約束されるなんて。」
「言質は取った。では、今日の放課後、決行する。逃げるなよ?」
あぁ・・・アルの瞳孔が開きっぱなしである。
「それと、クラウドには礼を貰わないとなぁ?私のフェリシアの前で、私の勇姿を披露出来る礼をな。」
「な、何でも言ってくれ。」
打ちのめされている皇子。そして、逃げ場所のないゼフ。
その後、勿論、私はキャサリンに告げ口という説明を盛りに盛って話しました。キャサリンが皇子を推しているのは分かっている。でも今は、力は皇子よりべた惚れされているキャサリンが上。
「本当に、しょうがない人ねぇ。大丈夫よ、フェリシア。ちゃんとお礼参りはしないとね?」
キャサリンが余りにも綺麗な笑顔を見せてくれたから、少し早まったかも?なんて思ってしまった。これっぽっちも、後悔はしていないけど。
そんなこんなしている内に、放課後となった。ギャラリーの代わりに、剣術の先生が立会人となった。これも、アリオンが用意したのだろう。
決闘の前に、アルは私に甘えた。
「えっ、私からキス?」
「ダメか?」
「うん、いいよ。ちょっと屈んでくれる?」
そう言えば、アルの身長は私よりかなり高くなった。目の前で目を閉じているアル。勇気を出して、ちょっぴり長いキスをした。