第16章 転生者
「お前・・・バカだろ。」
振り返った先には、ゼフを見据えたソーエンがいた。
「なっ、突然現れて失礼なヤツだな。」
「あのクラウドが溺愛している婚約者だぞ?護衛の一人くらいいても不思議じゃないだろ。」
「護衛?そんなヤツは・・・。」
「護衛が絶えず、目につくところにいると思うなよ。」
私たちというより、キャサリンを庇う様に前に立ち塞がったソーエン。
「クラウドには説明しておいてやる。お前がクラウドの溺愛している婚約者に濡れ衣を着せ謝罪をさせようとしていたのだと。」
「そ、そんな事をすれば、クラウド様は怒るに決まってっ」
「それが分かっているのに、何故こんな真似をする?大方、ダットン嬢にいい恰好を見せたかったのだろうが。」
「なっ!?エリシア嬢は私の婚約者の友人だ。虐められていたら、庇うに決まっている。」
「では、聞くが・・・どういう意図でダットン嬢を虐めると思った?」
「そ、それは状況を見て・・・エリシア嬢が酷く怯えていたから。」
あ、ソーエンが鼻で笑った。
「お前の視線は正直だぞ?」
「えっ?」
「婚約者のメルダス嬢を介して、視線はダットン嬢を追っている。多分、メルダス嬢は気付いていると思うぞ。家同士の婚約なんだし、お前のこと好きでも何でもないだろうからな。」
「そんな事は・・・ソフィア嬢は私の事を・・・。」
「慕う訳などないだろ。既に婚約解消に向けて動いている。そうだろう?ダットン嬢。」
増々、令嬢の顔色が悪くなった。その事で、事実なのだと理解したのだろう。
「婚約解消になんかなったら、ウチは・・・。」
「支援が水の泡だろうな。それと、クラウドの側近としてもだが、お前では役不足だ。」
「そんなのお前なんかに言われる筋合いはない!!」
「自分の大事な婚約者の護衛を私に頼んで来たのはクラウドだ。そんな私に、お前なんかなど言われる筋合いこそない。あぁ、二人は移動教室に行った方がいい。」
私たちはソーエンに頭を下げて、移動教室に向かった。
「気が弱い性格だったみたいね。あの怯え方、尋常じゃなかったもの。」
「そうね。想像以上だったわ。」
二人で溜め息を吐いて、気を取り直し授業を受けた。
二時間の移動教室での授業が終わった後、アルが真顔で皇子と話しをしていた。皇子も同じ真顔である。