第16章 転生者
「それで、フェリシアはどうかしたい?」
「ううん。理由が分かったのならもういいの。」
「まぁ、相手は私たちを悪役令嬢だと思っているみたいだものね。そんな私たちから距離を詰めたら怯えさせそうね。」
「うん。私は害さえなければいいの。」
「そうね。私もそう思うわ。」
「ただ、もし困っている事とかあるのなら、同じ転生者として助けられることがあるのなら助けたいとは・・・思う。」
「フェリシアらしいわね。でも、私も同意するわ。」
綺麗な微笑みを浮かべるキャサリン。
「後は、二人で話しましょうか?聞きたいこともあるでしょうし。」
キャサリンは皇子と共に、王城へと帰って行った。
「アル?」
「ん?」
「ずっと見守っていてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
なんて、丸く収まったと思っていたのだけど。転生者って、何か騒動が起こるのがセオリーなの?だって、あの令嬢が元ガキ大将に掴まっていたから。
今は移動教室で、令嬢だけの授業の為にキャサリンと移動中。その途中で視界に入って来たのが、この二人の光景。既に、半泣きになっている令嬢。
私はキャサリンと頷き合って、その間に割って入った。私を見て奇声を上げながら逃げて行った元ガキ大将。本当に失礼である。
そして、令嬢に目を向ければ、真っ青になったまま震えていた。仕方ないにしても、ちょっとだけ辛い。
「何をしているんだ?」
声を掛けて来たのは、ゼフだった。
この光景を見ただけならば、私たちが令嬢を虐めている様に誤解されそうな状況だ。
「イアート様に絡まれている所を、お助けしただけです。」
「本当か?エリシア嬢。」
しかし、令嬢の怯え方は尋常ではなかった。震える声で、その通りだと言ったのだけど、ゼフは厳しい目を私たちに向けた。
「本当の事を言え。ならば、今なら許してやる。エリシア嬢、私が来たからには大丈夫だ。」
違う、誤解だと何度も言っている令嬢だけど、震える声で言うものだから真実味が無かったのだろう。増々、厳しい目を向けて来るゼフに私たちは顔を見合わせた。
きっと、こういうのが本来の物語だったのだろう。
「他所の国の者が、この国で騒動を起こすのは看過出来ない。幾ら、クラウド様の婚約者だとは言え見過ごせる案件ではないからな。」