第16章 転生者
「ねぇ、フェリシア。彼女には話した方がいいんじゃないかしら?友人との仲も、気になるわ。だって、意図的じゃなくても婚約解消の原因になった訳でしょう?」
「うん、そうね。でも、どうやって話せばいいのかな。」
「あの怯え方だものね。」
そういう時は、決まって悪い事が起こる。
噂で聞いたのは、その翌日のことだった。
私たちはそれぞれの婚約者に抱えこまれながらの話し合いをしていた。言っても離れてくれないだろうから、いない者として放置だ。
「噂になっているのよね?」
「えぇ、彼女が原因で婚約解消になったって。周りからは疎遠にされてるって。」
「友人の婚約に水を差したって、白い目で見られてるみたいね。とばっちりなのに。」
お互いに眉を八の字にしている。そんなところに、颯爽と現れたのはロベルトとソーエン。そして、二人に連れて来られたあの令嬢だった。
緊張からか、真っ白な顔をしている。無理もない。今まで大人しく過ごしていたのに、皇子の側近二人からの連行だ。生きた心地がしないだろう。
「二人共、世話になった。」
「それで、俺たちも同伴してもいいって事だよな?」
「あぁ、構わない。なぁ?アルベルト。」
「あぁ、異論はない。それで、キミはフェリシアやエルマルタ嬢と同じ転生者だな?」
いきなりのアルのカミングアウト。令嬢は目が零れ落ちそうな程、大きく見開いていた。
「転生者?私と同じ・・・。だからなの?ゲームと同じじゃないのは。」
私は令嬢の前に立ち、今までの経緯を話した。
「理解してくれた?」
「はい。あ、あの・・・あの時はごめんなさい。絡まれて怖かったし、二人を見たらどうしていいか分からなくなって。」
「仕方ない事だと思うから気にしないで。それでね・・・良かったらだけど、私たちと友達になってくれない?それに、こんな状況は許せない。ダットン様は何も悪くないじゃない。」
大きく見開いた目から、ボロボロと涙が溢れ出した。ずっと、一人で誰にも言えずに心細かったのかもしれない。
「なぁ、転生者って何?」
この状況にも関わらず、話題をぶった切ったのはソーエン。珍しく、ロベルトも考え込んでいる様子。
「前世で死んで、前世の記憶を持ったままこの世界で生まれ変わったの。私もキャサリンもダットン様も。」