第16章 転生者
「酷いぞ、ソーエン。それに、私が戻って来たのを知ってのその話題とは意地が悪い。」
「だったら、キリキリ働けよ。誰だよ、毎日何枚も手紙を書いているヤツは。よくそんなに話題があるものだな。」
「あぁ、話題は尽きない。何せ、私の婚約者は美人だからな。それに頭もよくて愛らしい。」
皇子よ、キャサリンのことを大絶賛だな。
「あ~、はいはい。馬鹿な事を聞いた私が悪かった。」
皇子たちの軽口に、仲がいい事が伺える。あの王子にはないものだな。
それから数日後。
ソーエンから、ダットン子爵家のあの令嬢のことを話してくれた。
「エリシア=ダットン。子爵家の令嬢で、五年前子爵家に引き取られた遠縁にあたる令嬢だ。あの見目を気に入った子爵家が養女として迎い入れたらしい。生家は貴族とはいえ貧しい暮らしだったらしく、養女に出す代わりに多額の金銭を受け取っていた。子爵家はあの見目を磨いて、高位の貴族から婿入りできる相手を吟味中だ。」
確かに、見目は良い。庇護欲をそそる愛らしい見た目だと思う。ただ、当の本人の性格は控え目で表立って存在感を現わすタイプではない。
「それだけか?」
「特別に何かある事は無かった。養女とはいえ、それなりに大事にされている様だし、生家も本人の方が家の為に養女になることを承諾した様だからな。何せ、下には四人の妹と弟がいる。」
貴族らしい選択だというところ?下の妹たちや家の為にと承諾したのだろう。本意はどうだったか分からないけれど。
でも、私にはもっと他に何かあるのではないのかなと思ってしまう。そうでなければ、あんな驚いた顔をする訳がない。
「悪いな、大した情報じゃなくて。」
「いえ、ありがとうございました。」
悶々とするまま日々が過ぎていく。相変わらず、あの令嬢との接点はないまま。
そんな姿を、アルは心配そうに見ていたらしい。相変わらず甘えさせてくれるし、いつだって傍にいてくれる。でも、得も言われぬ不安って、どうしようもなくメンタルが落ちる。
そんなある日。
編入生として現れたキャサリンを見て、私は驚いた。再会して喜ぶ皇子を同伴させて、四人での相談事。そう、この時にキャサリンは転生のことを話した。
最初から皇子はポカンとしたまま。異次元過ぎて付いていけてないのが分かる。ひょっとしたら、作り話だって言われるかもしれない。