第16章 転生者
「うん・・・。」
アルの肩にグリグリと頭を擦りつける私。
「フェリシア。」
「うん?」
ん?アルの表情には、不愉快と書いている。紛れもなく、私の心の中で占めているあの令嬢の事が嫌なのだろう。
「いいよなぁ、お前たちは。私も早くキャサリン嬢と、懇意にしたい。キャサリン嬢にそんな風に擦り寄られたい。」
そう言えば、アルと同じ人種だったよこの皇子。皇子に羨ましがられた事によって、アルの機嫌が少し浮上した様だ。
それと、もう一つ気になること。先にこの国に来ている、あのガキ大将姉弟。訪ねて見れば、牙を抜かれた獣の様に大人しくなっていると教えてくれた。
と言うのも、最初は色々とやらかしたらしい。綺麗な令嬢に言い寄ったり、見目のいい子息に言い寄ったり・・・同じ様にガキ大将を発揮したところ、その伸び切った高い鼻をへし折られたそうだ。
ロベルトによって。流石、クラウド皇子の側近である。将来、有望株だ。あのレンジャーたちに見習わせたい。
学園で遭遇した時、悲鳴を上げて逃げられたり挙動不審になったりで、ロベルトは何をしたのか気になったものだ。
「アルベルト、ロベルトを見掛けなかったか?」
そう声を掛けて来たのは、皇子の側近の一人であるジェーガン侯爵家の子息であるソーエン。この人も見た目だけで、頭がキレるのだろうなぁ認識出来る存在だ。
「クラウドと生徒会の事で出ている。」
「そうか。」
「直ぐに戻るそうだ。待っていたらどうだ?」
アルが珍しい。
「そうか。なら、待たせてもら・・・。」
ソーエンが、チラッと何処かを見た。
「気付いたか。」
「あれは、ダットン子爵家の令嬢だな。知り合いか?」
「いいや?」
「調べてみるか。」
「世話になる。」
二人の間で、話されて行く。そして、人の気配にも鋭い。
「あ、あの・・・お世話になります。」
「気にするな。クラウドの良縁の礼だと思ってくれ。」
「ジェーガン様は、反対とかはされたりしなかったのですか?」
「クラウドが自ら見初めた令嬢は、初めてだった。それも相手は友好国のそれも高位の貴族。何の申し分もない相手だ。まぁ、あのクラウドが一目惚れなどするとは思ってもみなかったがな。更に言うと、婚約者となった令嬢と離れて使い物にならないなんて愉快だった。」
楽しそうに笑いながら、皇子をディスっている。