第16章 転生者
モーガン皇国に到着したのは、出発してから七日ほどが過ぎた時だった。出迎えてくれたのは、セーランから紹介されていたロベルト=バクス公爵家。
皇子が王城の滞在をと言ってくれたけれど、騒動に巻き込まれそうなので辞退した。皇子はキャサリンと変わらず、仲良くやれているらしい。
国に帰ってから、寂しさで使い物にならなかったとロベルトから聞かされた時は苦笑いするしか出来なかった。それでも、手紙のやり取りを頻繁にやっている様で、その一通一通を大切に保管しているらしい。
そんな皇子から、数ヵ月後にはキャサリンもこの国に留学してくるのだと教えてくれた。顔を綻ばせて喜ぶ顔は、とても幸せそうだった。
前国でもハードな騒動はあったし、この国でも何かしらは起こるだろうとは思っていたから重要人物の紹介はして貰ったし、同性の友人も出来るかもしれない。少しは期待したい。
そして、入学した初日。
私は初対面のクラスメイトの令嬢の一人から、物凄く驚いた顔をされた。アルも面識はないと言う。ならば、一体誰?名はエリシア=ダットン。子爵家の令嬢らしい。名を聞いても分からなかった相手。
まさか、前の国で色々とあった誰かの縁者とか?学園が始まり、それでも関わって来ることはなかったので放置していたのだけど・・・。
縁は意外なところから。皇子の従者の一人である、ゼフ=タータル伯爵子息の婚約者がソフィア=メルダス伯爵令嬢。その婚約者の学友が、私を見て驚いたダットンだった。
直接の害は無い。無いのだけど、何処となく一線引いている様子が伺える。たまに、ヒソヒソと私のことを噂している姿を見掛けたりもする。
アルに気がある様にも見えない。一体、何なんだろう?それ以外は、何の揉め事もなく穏やかな時間を過ごしていた。
残念ながら、同性の友人が出来ない。それでも、高位の同クラスの令嬢たちが、親切にしてくれる。だから、そう寂しくはない。
ないのだけど、気になるのは気になる。どんな噂をされているのだろう。彼女たちも同じクラスだから、どうしても目に入ってしまう。
そんなモヤモヤした日々を過ごすウチに、この国に来て早くも三ヶ月が過ぎていた。心に刺さった棘みたいに、気持ちが晴れないままアルに擦り寄っていた。
「珍しいな、フェリシアから擦り寄って来るのは。ずっと気にしている、令嬢の事が原因か?」