第15章 正攻法
屋敷に戻り、夕食までの間はアルと勉強。これもほぼ普段のルーティン。ただ、どうしても私の視線がアルに吸い寄せられる。それも、アルの胸元に。
私も、アルから視線が五月蝿いとか言われるだろうか?そんなの、言われなくても自覚してる。どうしよう・・・アルが気になって手が付かない。
そして、何度目かの視線をアルに向けた時だった。急に顎を掴まれ、視線を合わされたのは。
「初めに言っただろ?」
「えっ?」
「フェリシアに、私の全てをやると。私をどうしたい?」
「アルを?それは・・・。」
「私から視線を反らすな。」
再び、アルを瞳に映せば・・・アルは微笑んだ。薄暗さを全面的に乗せて。
「もっと、私に堕ちて来い。」
私の理性は、いつまで保てるのやら。
「そう遠くない未来には、その心の中の葛藤も無意味だと分かるだろうが・・・まぁ、もう暫く待とう。その時が来たら、フェリシアの世界は私だけで埋め尽くされればいい。」
アルが物騒なことを言う。それでも、きっと・・・私の嫌がる事はしないのだろうな。それだけは断言出来るのだけど。
「アル?」
「何だ?」
「浮気なんかしたら、物理的にこの世から消しちゃうからね?絶対に、許さない。」
あ・・・もう、私も大概薄暗い感情を持っているのか。
「フェリシアのこの手で、私が殺されるのなら本望だ。だが、浮気だけは天地が引っ繰り返ってもあり得ない。そして、もっと私に染まれ。」
頬を一撫でしては、その頬に触れるだけのキスをくれた。
アルの抱く愛情は深く重い。これがクライン家の特色なのだろう。
翌朝。
いつもの場所で馬車を降りれば、あの令嬢とそれに伴う幾人かの令嬢たちが待ち伏せていた。そうか、令嬢のポジティブさをグレードアップさせたのは彼女たちか。
「クライン様、いいえ、アルベルト様。おはようございます。昨日のアレは酷いです。幾ら私でも傷つきました。今日はそのお詫びを頂きたいと思います。いいですよね?」
えっ、何言ってんの?馬鹿なの?それに、取り巻きはニヤニヤしている。あぁ、そうか。周りは分かっててやっているのか。本当に性格が悪い。でも、何故こんなことを?
そんな思考を巡らせている時、爽やかな声が聞こえてきた。