第13章 フラグってどれだけ立つもの?
本来なら、見た目は悪くないと思われる。流石、公爵家の御曹司だけある。でも、アルを見慣れた私からすれば、何も感じない。
しかし、ガキ大将は自分の容姿に自信を持っているらしい。気持ち悪いことに、私を凝視している。同じクラスだから、本当に迷惑以外の何ものでもない。
だから、ここぞとばかりに私はハッスルした。いつもならアルに擦り寄られているのだけど、今日は私が頑張った。アルに触れ、アルが好きだとアルの目を見て口にする。
笑顔も三割増しで、トッピングしましたとも。アルはご機嫌で、とっても綺麗な微笑みを私に向けてくれる。
何となく、他の貴族の中でも、婚約者同士が仲睦まじくなっている光景を見掛けることが増えた気がするけれど、きっと私たちの影響だと思う。ルーエンたちを筆頭に。
勇者はいなくなったのに、新しい勇者は現れるものなのね?これもフラグか何かなの?今度は美人の勇者だった。ガキ大将の姉の友人らしいが、アルに絡んでくる様になった。
全く以って、不愉快以外の何ものでもないのだけど。
「どうした?そんな膨れっ面をして。まぁ、その顔も可愛いと思うが。私が思う理由ならば、余計に愛おしい。さぁ、私の可愛い人。私にその心中を話してくれないか?」
アルは分かっていて、こんな発言を二番目の勇者の目の前で放つ。アルの視線は、私にだけ向けていて欲しい。そう思う辺り、私もヤンデレに片足以上突っ込んでいるのかもしれない。
だが、しかし・・・私が発した言葉で、辺りの空気が氷点下になった。
「私の知らない所で、こんな美人と知り合っていたアルなんて知らないっ!!」
プイッと顔を背ければ、アルに顎を掴まれアルの方へと向き直される。アルの瞳と合わされば、ゾクリとする程の闇を味合わされた。
「フェリシア、私から視線を反らす事は許さない。」
アルは私を見据えたまま、更にこう言った。
「そこの女、消えろ。不愉快だ。」
勇者二号は、きっとこの空気感を理解しているはず。だって、視界の端でブルブル震えているのが分かるから。そして、逃げ出そうにも足に力が入らないのやもしれない。
だがしかし、今日の私はアル以上におかしくなっていたんだと思う。
「ねぇ、アル。私以外の女をその頭の片隅にさえ存在させるのは凄く不愉快なんだけど。」
あ、アルの闇が消えた。