第13章 フラグってどれだけ立つもの?
「ねぇ、あんたって本当にアルベルト様に愛されてるって思っているの?」
今回は、勇者のお出ましである。勇者から、私はあんた呼ばわりだ。ま、どうでもいいけど。名を呼ばれた訳じゃないから、私たちの惚気オンリーの会話は止まらない。
キャッキャッしながら、お互いの婚約者を賛辞している。
「ねぇってば!!無視するなよ。この私が声を掛けてやってんのに。ブスは大人しく引き下がれよ。」
随分な言い草の勇者である。見た目はこんなに可愛いのに、全て台無しになる物言いだ。しかし、私たちは分かってて無視を続行。
「おいっ!!無視するなって言ってんだよ、このアバズレが!!」
手を振り上げた時、その手を掴んだのはルーエン様のご学友のノービル侯爵家の子息であるアリオンだった。フラミンゴ色の髪に、切れ長の青い瞳。そんな柔男の見た目に反して、毒舌で有名な人だった。
アリオンに気付いたヒロインは、直ぐに態度を変えたけれど最初からヒロインの物言いを聞いていたらしく無表情でヒロインの腕を鷲掴みしたままだ。
痛みで酷く歪んだ顔と、さっきまでの悪態をついていた顔とそう変わり映えしない。私も、今の今までネスタリアと二人だけの空間だと思っていた。クラスメイトたちは、教室に誰も残っていなかったのだから。
「アリオン、その辺で止めて頂戴。」
「ルーエンにこの事を話すのなら、考えてもいい。」
「わ、私は何もしていないのに、こんな酷いこと・・・。」
あぁ、目に浮かべた水分が、零れ落ちそうだ。
「ローエン嬢は、どう思う?」
「私は部外者なので、当事者が・・・。」
まさかの部外者だと言った私に、ヒロインは目を剥いて驚いてから睨み付けられた。嫌々、私だってバカじゃないから私に向かって言われたのは分かっているよ?でもね、ネスタリアが自分に言われたものとして扱っているし、アリオンもその認識だ。
きっと、ルーエンが何か口添えしてくれていたのだと思われる。だったら、後でお礼をするとしてそのままこの話しに乗るべきでしょう?
「モノフロン家から、トリント伯爵家に苦言を発しておきましょう。」
「それだけか?生易しいのだな。ルーエンが知れば、王族からも物言いはあるだろうに。」
「アラ?何も私は、ルーエン様に何も言わないとは言っていないわ。」