第11章 剣術大会
ヒロインが言った虐めの話題なんて、どこか遠くに吹っ飛ばされている。皇子はキャサリンの手を握り締め、熱い眼差しを向けたままだ。
「あの・・・クラウド皇子。」
めげないヒロインが、再び、皇子の名を呼んだ。ここまできたら、逞し過ぎるしピエロにしか成れないと思うのに凄い行動力だな。
「私の可愛いキャサリン嬢が言った言葉を理解出来なかったのか?気安く私の名を口にするなと言っている。何故、分からない?まさかとは思うが、私に取り入れるとは考えていないよな。」
あ、ヤンデレ全開の目をしている。アルなら大丈夫だけど、皇子のこの視線はちょっと怖い。キャサリンも、ちょっと怯えている。
それに気付いた皇子は、直ぐに人のいい笑顔を浮かべた。
「私のキャサリン嬢に嫌われたら、地獄の果てまで追い込んで生きていたくないと思う程に罰を与えるから私たちの前でこれ以上口を開くな。」
怖い・・・言葉は凄いのに、超・笑顔である。ヒロインの顔は引き攣っている。無理もないと思う。ここまで言われたら、心変わりなどしないと理解するだろう。
いつもの様に涙を浮かべるかな?と思ったけれど、ヒロインらしからぬ人を殺しそうな視線をキャサリンに向けては、ハーレムの中に戻って行った。
そんな時、歓声が上がる。どうやら、勝負が決まったらしい。カラフル頭とアルとモーリスは順調に勝ち進み、赤髪とオレンジ髪、アルとモーリスの四人が準決勝に進んだ。
昼休みとなり、私はアルと持ち込みの食事。和食で揃えたお弁当は、直ぐにアルの胃袋に収まった。その後、私の膝の上に寝転んだ。
「次の試合は、ディーソン様(赤髪攻略者)とですね。」
「そうだな。」
「しっかり、応援しますからね。」
「あぁ、そうしてくれ。私だけを見ていろ。」
声は甘い。伸びて来た手が、私の頬を撫でる。
「ご褒美は考えられましたか?」
「あぁ、考えた。それに関しての下準備も終わっている。」
「下準備?どんな?」
「それは後のお楽しみだ。」
アルの中には、負けるという文字はないのだろうな。
時間となり、再び会場に集まった。アルが赤髪攻略者と対峙する。そう言えば、最近の赤髪攻略者は剣術が疎かだと聞いた。以前より、体形がぽっちゃりした気がする。太った?