第11章 剣術大会
クラスの予選が終わり、モーリスは少し悔しそうだった。どうやら、アルに勝ちたかったらしい。と言うのも、夏休みにモーリスの別荘に行かなかったから。
あれだけノリノリで提案していたモーリスだったけれど、アルは私を連れて親族への顔合わせ巡りをすることになったから。
流石に家同士の案件だったから、文句を言いつつも退いてくれたのだけど。今度は、冬休みにでもと再び提案したら、アルは難色を示したらしい。
アルは私との時間が減るのが、嫌だと思っているのだろう。冬休みは夏と違って休み期間が短いから。それに、毎年行われている聖夜祭。前世のクリスマス仕様のイベントは、恰好の恋人たちのイベントだから。
だから、予選でモーリスが勝ったら、アルは行ってもいいと約束していたのだけど、それが叶わなかった。
「じゃあ、聖夜祭に付き合えよ。」
「断わる。」
「嫌々、少しは考える素振りくらいしろよ。」
「・・・だが、断わる。」
「アハハ、流石アルベルトだな。モーリス、聖夜祭は恋人同士の祭典だ。それを邪魔しようとするのはどうかと思うぞ?例年の如く、俺で我慢しろ。代わりに、新年祭ならいいんじゃないか?」
新年祭とは、国上げての盛大なお祭りで各地方の色んな産物が集まるイベントだ。
「次の新年祭は、俺の頑張りもあってフェリシア嬢に似合いそうな宝飾の手配もしてあるのだがどうする?」
「異論ない。」
「それでこそアルベルトだな。まぁ、楽しみにしていてくれ。時期が来れば紹介する。」
「分かった。」
「モーリス、アルベルトを動かしたいなら、先ずはフェリシア嬢を何とかしないとだろ?」
ジト目でアルを見ているモーリスだけど、一つ溜め息をついた。
「そうだよな・・・全てがフェリシア嬢基準なんだよな。」
「アル・・・私は、別に宝飾は・・・。」
「フェリシアに似合うものを選ぼうな?」
これは、私の反論なんて聞き入れてくれなさそうだ。普段から、色々と貢がれているのに。
「そうだった。ねぇ、アル。優勝したらアルのお願いを何でも一つ聞くから考えておいてね?」
「何でも?本当に何でもいいのか?」
「うん。痛いこととか怖いことじゃないのなら何でもいいよ。」
「分かった。では、優勝した時にその願いを告げよう。」