第10章 ヤンデレの行動力は侮れない
「・・・ってことで、原作はどうなの?」
「出なかったよ。」
「そっか。原作通りってことなのね。」
誰が優勝するかは、聞かないでおこう。私はアルを信じようと思っているのだから。うん、必要ないものね。
「それで、皇子とはどう?」
私の問い掛けに、キャサリンはアルを見た。でも、顔を赤く染めたから、悪い心証ではないのだろう。
「あ、あのね・・・国王様から、お祝いの手紙を貰ったの。同盟国との同盟を強固にしてくれるから、あのバカ王子の事は気にしなくていいって。」
「国王様がそう言ってくれたのなら、エルマルタ家のご両親の心証は?」
「大喜びよ。だって、相手はこの国より大国の第一皇子だもの。あ、でも、別に権力を求めている両親じゃないのよ?ただ、ウチにいらしたでしょう?もうね・・・色々と、砂糖を吐いちゃった。」
遠い目をしては、その時のことを思い出しているのだろう。
「ねぇ、ゲームの話しは皇子にするの?」
今は未だ知らない話しだから、キャサリンが放課後にローエン家に来ている。
「その内に話そうかなとは思ってる。」
「そう。」
「ただね・・・。」
「何か気掛かりでも?」
「クラウド皇子の事じゃないの。ホラ、最近、ヒロインが大人しいでしょ?気にならない?」
「それは確かに、気になっていたけど。あ、皇子に粉掛けてる?」
「うん、それはあるんだけど・・・。」
あるんだ・・・凄いな、ヒロインの行動力。
「ヒロインって、ちょっと勘違い系になってるでしょ?だからね、私はヒロインだから貴方と出会って結ばれる運命だって言ってて・・・。」
嫌々、原作通りならこの国の王子との運命を感じるものだろうに。皇子の方が好みなのかしら?
「皇子は何って?」
「バカな子を見ている目をしてる。そりゃあ、自分はヒロインだからって、知らない相手からすれば頭がおかしいと思うだろうから。」
「キャサリンの事は何か言われたりした?」
「あ~・・・まぁ、ちょっとね。私の事は、頭がケバくて執着力が激しい悪役令嬢だからって言われた。」
頭がケバいって、その真紅の髪を皇子は好んでいるのに。
「その時、皇子も一緒にいたのだけど・・・初めてかなぁ。あんな笑顔であんな激怒して・・・皇子は、ヒロインに私のこの髪が好みで、執着力が激しいのは諸手を上げて喜べるって言ったのよ。ヒロイン、ポカンとしてた。」