第10章 ヤンデレの行動力は侮れない
キャサリンはあの後、全力でヤンデレ皇子を味わった様で死んだ魚の様な目をしていた。えっと・・・今、お昼休みの中庭なんだけど。
私の右手を握り締めるアル。そして、キャサリンの右手を握り締めているクラウド皇子。二人とも、お互いの婚約者を凝視中。
「フェリシア・・・どうしたらいいの?」
「う~ん、成るようにしか成らないよ?人間、諦めも大事だって言うもの。」
「そんなぁ・・・。」
あぁ、皇子の煩悩であるキャサリンの髪に顔を埋めている。良かったね、皇子。って、アルも張り合わなくていいからね?
「もういいだろう?二人の時間が減る。行くぞ、フェリシア。」
仕方ないのでキャサリンに手を振って、アルに連行されていく。キャサリンもこれからしっかり、ヤンデレを味わってください。
ベンチに座れば、身を寄せて来るアル。
「フェリシア、小耳に挟んだ事があるんだが。」
「どんな事?」
「近々、剣術大会があるだろう?」
そう言えば、そんな事を聞いた気がする。子息たちの勝ち抜き戦で、学年毎に催されるイベントらしい。確かに、ゲームでも親密度を上げる為にそういうのがあった。
「優勝者には学園から、ダイヤモンドのブローチを贈られるらしい。それを意中の相手に捧げたら、幸運が訪れるそうだ。楽しみにしていてくれ。」
「それって・・・優勝するってこと?」
「あぁ、そうだ。」
「うん、分かった。応援するね。」
剣術のことはよく分からないけど、アルならそうなりそうな気がする。
「ってことで、暫くは鍛錬するから放課後は真っすぐ家に送り届けるから。」
友人と出掛ける・・・なんて言ったら、大変なことになりそう。勿論、そんな事は言わないけれど。
それから一ヵ月。アルは王城にある騎士団の中でモーリスやセーランと共に訓練したそうだ。王子も直属の護衛騎士と鍛錬したと聞いた。
一ヵ月のトレーニングの成果か、アルの身体は一回り立派になっていた。一体、どんな鍛錬をしたのやら。
今回は、クラウド皇子はこの大会には出場しない。観覧だと教えてくれた。同盟国の第一皇子に怪我なんかさせちゃ大変だものね。ただ、原作でもそうだったのか分からないのでキャサリンに聞いてみよう。