第10章 ヤンデレの行動力は侮れない
「アルは私のものだから、余所見なんかしちゃダメだよ?誰にもあげないからね。分かった?」
「私はフェリシアのものか。うん、そうだな。」
って、こんな場所で頬擦りするのは止めて。みんな見てるから。
「フェリシア・・・。」
あ、何か溶けてしまいそうなキャサリンが、私に助けを求める様な声で名を呼ぶ。
「キャサリン、おはよう。」
「おはよう・・・ねぇ、これはどういう事?」
「同類だったみたい。」
あ、その一言でキャサリンがアルを見た。そうして、目を泳がせている。
「私も、これに慣れないといけないの?」
「そうだね。」
「羞恥で死ねそうなんだけど。」
「大丈夫。人間って、慣れる生き物だから。それに・・・本命なんだから、大いに楽しめばいいんだよ。」
遠い目をしたキャサリン。
「本命って何?」
あ、皇子が食い付いた。そりゃあ、気になるよね。でも、それはキャサリン本人から聞いてください。
「キャサリンが自ら教えてくれますよ。」
「キャサリン嬢、私に事細かく説明願えるかい?」
手をヒラヒラしては、アルと共に教室に入る。
座席に座れば、普段と同じく私の手を撫でながらアルが私を見ている。
「私のフェリシアが可愛い。」
ベタベタされるし、頭にキスされるし頬は撫でられるし・・・アルの通常運転だ。なので、今日は影響されたのか・・・アルの手を撫でてみた。アルの目が丸くなった。
「フェリシア?」
「婚約した当初から考えたら、随分、男の人らしい手になったね。まだまだ大きくなるのだろうけれど。それに、手がゴツゴツしてる。」
「フェリシアを自分の手で守る為の苦労は、厭わないつもりだから。」
「いつも守ってくれてありがとう。」
アルは私の額にキスする。因みに、今は教室である。周りも慣れているのか、反応する人は少ない。
「アル、もう一回。」
珍しく強請って見れば、アルは嬉しそうに頬にキスしてくれた。好きだと言葉も添えて。
「なぁ、お前ら・・・ここが教室だって理解してるか?見ている方が、砂糖を吐きそうだ。」
「ご、ごめんなさい。」
「モーリス、外へ出ろ。」
「嫌々、何だよ。そのアルの人を射抜きそうな目は。ひょっとして、裏庭とかに俺は埋められるのか?」
「埋めるなら、生き埋めにしてやる。」
私がアルに傍に居てと言えば、直ぐにモーリスのことは頭の中から捨てたらしい。