第10章 ヤンデレの行動力は侮れない
翌朝、いつもの様にアルと登校した。満面の笑顔で出迎えてくれたのが、クラウド皇子だった。そこで、衝撃的な話しを聞かされる。
「ローエン嬢、橋渡しをありがとう。昨日、見合いは蹴散らしたし、私とキャサリン嬢の婚約は問題なく纏まりそうだから。多分、この二三日で。」
「・・・そ、そうですか。あの・・・キャサリンは何と?」
「うん?昨日は凄く美しくて、可愛らしい一面も見せて貰ったよ?やはり、迅速に行動して良かった。」
アル並の行動力だな、クラウド皇子は。そうか・・・昨日、エルマルタ家に行ったのね。キャサリン、凄く驚いただろうなぁ。この後、教室までの間、クラウド皇子はキャサリンの事を嬉しそうに話してくれた。
権力って凄い。純粋にそう思った。
だが、面目を潰された王子はどうやらご立腹らしい。そりゃあ、予定なら公爵家が自身の陣営に入る事になっていたのだから。
ただ、その王子に取っての予定は、叶えられる事にはならなかったのだけど。本来なら、私よりキャサリンが王子の婚約者として選ばれそうなものだから。
「アハハ、ローエン嬢の思う様にはならないよ。だって、王子は叶わぬ恋に落ちているんだから。なぁ?アルベルト。」
「・・・今、何って?」
アルの真顔に皇子は、失言だったと詫びた。一国の第一皇子相手に詫びられるアルって・・・。それに、私の頭の中が皇子にバレているのがちょっと嫌だ。
「もし・・・もしも、その相手がキャサリンだったらどうするつもりだったのですか?私はキャサリンの友人なので、キャサリンが選ぶ方を応援しますけど。」
「ごめんなさい・・・。許して下さい。」
「分かって頂けた様で、何よりです。」
そんな会話を交わしていると、教室の前にキャサリンがいた。私が声掛けをする前に、皇子は爽やかな笑みを浮かべてキャサリンに突進していった。
あぁ、アルと一緒でキャサリンの手を握り締めて、皇子スマイルを振り撒いている。キャサリンの頭から蒸気が吹き出しそうだ。
「羨ましい?」
「えっ?どうして私が羨ましいって思うと思うの?」
「見た目がいいし、一国の第一皇子だろ。それに、見た目は皇子そのものだと言っても過言ではないし。」
そんな言葉を吐くのに、私を捉えて離したくはないという目をしている。