第1章 転生したら悪役令嬢でした
「招待に応じてくれて嬉しいよ。それと、あの時は名乗らなくて申し訳ない。申し遅れたが、アルベルト・クラインだ。いきなりの招待、不快に思わなかっただろうか?」
「いいえ、不快だなんて。御存知の様でしたけれど、フェリシア・ローエンです。」
実際、驚きはしたけれど不快だなんて思ってはいなかった。
「それを聞いて安心した。」
「こちらは、たくさんの薬草を育てていらっしゃるのですね。」
「あぁ、薔薇など華美な花ではないから見栄えはしないが。」
「そうですか?薬草も薬草で良さはあると私は思います。」
「そう言ってくれるのは、キミくらいだよ。」
少し面白くない話しをしていいだろうかと言われて、頷けば彼の今までの貴族令嬢とのやり取りを聞くことになった。
流石、高位の貴族だけあって縁談はずっと前からあったらしい。しかし、この東屋に案内すると、大抵の令嬢は機嫌を損ねたそうだ。こんな貧相な見栄えのしない場所に案内するなんてと言って。
そんな最中、王子の誕生会に薬草園でしゃがみ込んでまで薬草を愛でていた私に感動したそうだった。薬草=ハーブが好きだったのはあるが、そこまで深く考えていた訳ではなかった私。
「薬草は我が領地の特産なんだ。」
彼の言葉に、私は頷いた。事前にお父様から聞いていた内容だったからだ。
「ハーブティーは飲めるかな?」
「はい。大好きです。」
「それは良かった。」
微かにホッとした表情をしたので、彼も緊張していたのだと伺えた。用意してくれたハーブティーは、カモミール。ホッとする安らげるこの穏やかな時間に、彼は私の興味のあるものを質問してきた。
感情の起伏はあまりない彼だけど、よくよく注視すれば楽しいと感じてくれているのが分かった。それに、ずっと私を知ろうとしてくれ気遣ってくれる。
そんな気遣いをくれる中、穏やかな時間が過ぎていく。そうしている内に、両家のお父様が迎えに来てくれてこのお茶会が終わることとなった。
「また、招待してもいいか?是非、また当家に来てくれ。」
私はお父様の顔を見た。笑って頷いてくれたので、その申し出を受けることにした。当家の馬車が門を出るまで、彼だけが見送ってくれた。
「どうだった?」
「私には正直な方だった印象を受けました。」
だって、今までの令嬢とのやりとりなんて本当なら知られたくないと思うから。