第9章 悪役令嬢は美人
私の不敬だと言われそうな、ジト目は暫し続いた。
「本当だ、信じてくれ!!」
「美人なら、クラウド皇子の国にもたくさんいるでしょうに。」
「キャサリン嬢の、あの真紅の綺麗な髪は他にはいない。それにあの時は絡んでいた男共がキャサリン嬢の事を悪役令嬢など失礼な事を言っていたが、あの美貌が故のヤッカミでしかないと私は思っている。出来るなら、私はあの美しい真紅の髪に顔を埋めた・・・あ、今のは聞かなかったことにしてくれ。」
アレ?何か、こういうセリフって、普段から耳にしている気がする。どうしてか、皇子の背景にアルが浮かぶ。まさか、同類?皇子もヤンデレ?
でも、何かお互いに思い合っているみたいだから、橋渡しくらいはいいのか。嫌、でも・・・キャサリンはお見合いをすると聞いている。
「来週、キャサリンはお見合いの予定があるそうです。お父様からのゴリ押しらしいのですが。」
あ、何か絶望している顔。でも、直ぐに我に返った。
「お願いだ、直ぐでも紹介してくれ。何でもするから、一度でいい。私に彼女との橋渡しをしては貰えないか?」
「絶対、泣かせたりしないと約束してくれるのなら。」
「分かった、約束しよう。」
皇子の熱心さに負けて、私はキャサリンがいる教室を覗いた。いつものメンバーと会話をしている。品の良い笑顔なのは、公爵令嬢故だろう。
キャサリンが私に気付いて、教室から出て来てくれた。そのままキャサリンの腕を掴み、人気のない場所へと連行していく。人目の付く場所では、分が悪い。
「呼んで来ましたよ~。」
「フェリシア?どういう事?えっ・・・どうして?」
皇子は躊躇なくキャサリンに近付いて来て、突然、目の前で膝まづいた。これには私も吃驚である。
「一生のお願いです。どうか、私と結婚してください。」
ん??結婚?婚約は?
困った顔と戸惑った顔のキャサリン。無理もない。
「あの日、街で貴女を助けた時から、私は貴女の虜になりました。あのバカどもは貴女を悪役令嬢だと言っていましたが、それは貴女のその美しさに対する羨望と自分のものにはならない歯がゆさからくるものだと思っています。貴方は誰よりも美しい。」
この後も暫く、皇子は如何にキャサリンが素晴らしいか胸焼けしそうになるくらい話していた。こんな如何にもの見た目の人からの、熱い胸の内を聞かせられキャサリンの顔は真っ赤。