第8章 嫌がらせ
最近、表立ってヒロインの行動が沈静化している。一体、何処で誰と時間を共有しているのだろうか。それは思いの外、セーランから知らされた。
そう言えば、セーランは入学する前に遊学していたと言っていた。その遊学先が、次作のゲームの隠しキャラである皇子の国だった。
皇子の国では懇意にしていたらしく、それもあってこの国に留学して来るのだと教えてくれた。手続きとかの理由で、直ぐにとは行かなかったが秋の季節になった頃に留学して来た。
セーランが言うには、この皇子は優秀で人望もあるそうだ。そして、皇子とはいえ気位も高くなく気安い性格。故に、私たちのクラスに編入して、直ぐに打ち解けていた。それは例にも漏れず、ヒロインとも笑顔で接している。ヒロインは周りの令嬢にマウントを取っているが、皇子はそれを華麗に交わしていた。
その皇子であるクラウドが、セーランに気安く声を掛けて来た。金髪碧眼の見た目は、そのまま皇子を地でいく存在感。
「久しぶりだな、セーラン。色々と世話になった。」
「お互い様だろ。俺もモーガン国では世話になったんだし。」
「それもそうだな。で、その目元が似ているのがセーランの従兄弟か?私はモーガン国の第一皇子、クラウドだ。キミは・・・クラインだな?」
「アルベルトでいい。」
珍しく、好意的?
「私のことも、クラウドと呼んでくれ。学園で貴賤は問わないものだしな。それで・・・。」
「私の婚約者、フェリシア=ローエン伯爵令嬢だ。」
「キミがローエン嬢。よろしく。」
セーランと仲がいいだけあって、気安い存在だ。私も笑顔で挨拶を返した。私の友人たちとも言葉を交わし、授業が始まった。
セーランの隣りに座った皇子の後頭部を見て、私はあの時にヒロインと居た人なのだと思い返していた。さっきは、ヒロインとはそう親しくは見えなかった。
う~ん・・・。裏の顔があるとか?でも、隠しキャラだと言っていたよね?それに、キャサリンが好きな人。他にも心配だったから、休み時間にキャサリンがいる教室を訪ねた。
キャサリンにはどうやら、親しくしている友人はいるらしい。クラスでもそう目立つ存在ではないものの、控え目ながらも穏やかに笑っている様子を見てホッとした。
あんな事件がったにも関わらずにだ。
そんなキャサリンが私に気付き、廊下へと出て来てくれた。