第7章 思いがけない人との出会い
令嬢はヒロインの口ぶりで、ヒロインも転生者なのだと気付いたそうだ。全てのキャラは私のものだと思い込んでいる。更に言えば、両方のゲームを知っていて二倍楽しめて嬉しいとまで言っていたそうだ。
「私はひっそりと攻略者と関わらずに生きて来たのだけど、私の存在そのものが不愉快なんですって。だから、予定通りに家を潰して路頭に迷わせてやるって高笑いしてた。ねぇ・・・あんな人がヒロインでいいと思う?」
「随分、欲張りなのね。ねぇ、一つ聞きたいことがあるのだけど。」
私は先日の街でヒロインと一緒にいた、金髪碧眼の男性の事を聞いてみた。
「多分、この国に留学として来る隣国の皇子様だと思う。隠しキャラなの。」
全ルートをクリアしたら、登場する存在だ。
私の事は、ヒロインが執着している理由から、別のゲームの悪役令嬢でかつ自分と同じ存在だと思ったそうだ。
「ねえ、どうしてあんな状況になったの?」
「ヒロインに心酔しているアイツが、ヒロインにけし掛けられて私を痛め付けたの。訳の分からない濡れ衣を着せて、本当に怖かった。私はただ・・・傍観者で良かったのに。」
「どういう理由で二つのゲームが同じ舞台になったのか分からないけど、私は貴女がゲーム通りの悪役令嬢ではないと思う。キャラが好きだからこそ、傍観者でいいと思ったのよね?」
この国の何処かに、本当ならもう一人のヒロインがいる。
「それでね、ここからが本題なの。貴女の婚約者は、私の方の攻略者よ。」
「エッ・・・アルが?」
目の前が真っ暗になった。
「ヤンデレキャラだったけど、物凄く人気があったわ。」
「ほ、他には?」
「それは物理的に無理と言うか・・・。あのカラフル頭たちの子供たちが次の攻略者なの。」
「親がまだ学生だから、その子供たちであるキャラはいないってこと?」
「多分・・・。」
では、次作のゲームで登場する攻略者はあの王子とアルのみ?頭の中で整理していると、令嬢はこんなことを言った。
「あのね、どうしても貴女に言いたいことがあって。あ、婚約者がどうとかじゃなくて。貴女の方の王子って、貴女に執着しているの分かってるよね?」
「どうしてだろう?理由が分からない。」
「それはね、今の貴方が愛らしくて人望があるからよ。」
「わ、私が?」
この時になって、令嬢は微笑ましそうな顔をした。