第7章 思いがけない人との出会い
夏休みに入り、明日からクライン家の領地に行く前日のこと。
突然、ローエン家に訪ねて来たのは、あのオレンジ髪の攻略者から暴力を受けた令嬢だった。今まで一度足りとも接点なんかなかった存在なのに、相手の令嬢は私のことを知っている様子。
切羽詰まった顔をしていたので、話しだけでもと応接室に案内した。メイドが同席しようとしたけれど、頑なに令嬢はそれを拒んだので私は外で待つように言った。
まさか、襲われたりはしまい?
しかし、ある意味、私は予想もしなかった話しの内容に思考が付いていけなかった。と言うのも、令嬢の第一声が「貴女も、転生者でしょう?」
だったから。
「私の今世の名前は、キャサリン=エルマルタよ。前世でいう、貴女と同じゲームの悪役令嬢の名なの。でも、同じと言っても違うゲームのものだけどね。」
「この世界は、二つのゲームの世界が混載してるってこと?」
「そうみたい。本当は、貴女にもっと早くに声を掛けたかったのだけど・・・ホラ、貴女には協力な支援者がいるじゃない?」
アルのことだな。確かに、いつもベッタリだった。
「私が殴られた時、貴女も見ていたのよね?」
「途中からだけど。」
「込み入った話しだけど、聞いて貰えるかしら?」
悲壮感たっぷりのこの令嬢に、私は否とは言えなかった。きっと、私は運が良かった。そうなのだろう。
「私の方のゲームに出て来るヒロイン役は、貴女のゲームのヒロインによって編入して来れなくされたの。」
「えっ?どういうこと?」
「要はね・・・どちらの攻略者も、自分のものにしようとしてた。貴女には婚約者や理解者がいる。それも家柄も強力な。だから、貴女の断罪を後回しにして私を・・・。」
ポロポロと涙を流す令嬢は、酷く小さく見えた。
「あ、あの・・・大丈夫?えっと、私は貴女の方のゲームのことを知らないの。詳しく教えてくれる?」
令嬢は頷いて、ゲームの内容を話してくれた。
先に発売されたのは、私がいる方のもの。そして、その数年後にこのゲームの二十数年後が舞台のものが発売されたそうだ。
「私は貴女の方のゲームの内容は分からないけど、私は私の方のゲームの愛好者だったの。そして、私はその断罪される悪役令嬢に転生した。私も物語通りなら婚約する王子とは、接点を持たずに生きて来たわ。でもね・・・あのヒロインは、そんな私にも容赦なかった。」