第5章 ピクニック
普段のアルは持ち寄りに手を出さないが、今日は少しずつでも手を付けていた。そういうところも、ほっこりする。
「なぁ、皆は夏休みの予定あんの?良かったらウチの別荘に遊びに来ないか?毎年、セーランも来てるから皆も来いよ。」
「分かった。でも、その前にフェリシアはウチの別荘だな。」
「うん、いつもありがとうね。」
「いつもって、あぁそうか。お前達は婚約しているんだったな。じゃあ、日程擦り合わせて要相談だな。」
楽しみが増えた。この時の私は、純粋にそんなことを思っていた。友人と友人の別荘にご招待なんて、前世ではなかった出来事だから余計に楽しみ。
でも、その前にアルのおウチの別荘でいつもアルと一緒に時間を過ごしていた。お互いの領地に行き来し合ってもいるし、予定の無い時はいつも一緒だった。
「ウチの別荘は北部だから、夏でも結構涼しいんだ。また、向こうでピクニックに行こう。」
賛成と声が上がる。
でも・・・夏休みの前に、テストがある。学期ごとに二回ずつだから、一年で六回。
「テスト勉強はどうしてんだ?俺はセーランとやってるけど。皆は?」
「私はフェリシアの家で泊まり込む。」
「ハッ?泊まり込むって何で?」
「時間を共有したいだけ。」
「アルベルトって・・・フェリシア嬢を囲い過ぎだろ。ってことで、俺もセーランも行っていい?」
仏頂面のアルだったけれど、私の友人も参加したいってことでごり押しされた。
「街散策も行きたいよな。季節の変わり目には、色々新作が販売されるだろうし。」
放課後に皆で街ブラも、ちょっと楽しみだ。アルは少し不機嫌な顔をしていたけれど、反対はしなかった。
皆と分かれての帰り道。独り占め・・・って言葉が何度も出て来ては、私をハグしてはあちこちにキスするアル。
「楽しそうだったな?」
「うん。凄く楽しかった。ねぇ、アル。ひょっとして皆でのピクニックって・・・。」
「フェリシアが行きたそうだったから。」
そうか・・・私の意思を尊重してくれたのか。ってことは・・・私が賛成しなければ、アルは私を独り占めしたいってこと?
「って、アル・・・くすぐったいよ・・・。」
「独り占め出来なかったんだから、これくらい許容してくれ。じゃなければ、爆発する。」
目を丸くしてアルを見れば、直ぐ目の前にアルの瞳が私を見ていた。