第5章 ピクニック
甘くないお菓子や、サンドイッチなどの軽食を携えて挑んだピクニック。前世でも、こんな催しを体験したことがない。楽しみでワクワクして、遠足前の小学生の様に気分が高揚していた。
当日の早朝から頑張った結果を籠に摘めて、アルが迎えに来てくれるのを待っていた。今日の装いは、アルからプレゼントされた可愛い菫色のワンピースだった。
届いた時には驚いたけれど、受け取らない選択肢は有り得ないらしくそのまま有難く受け取った。執着の賜物だと言っても過言ではない小物までのカラー。
全てが、アルの瞳の色である。因みに、アルの髪色は美味しそうなキャラメル色。たまに触れたりするけれど、柔らかくて艶のある髪質だ。
時間通りにお迎えが到着しては、早々に乗り込んだ侯爵家の馬車。どうやらモーリスたちから、馬車を同伴しないかと言われたらしいけれど即答で却下したらしい。
「やはり、そのワンピース似合っている。可愛い。」
「あ、ありがとう。アルも素敵・・・だよ。」
「ありがとう。」
予定通りに到着した先は、だだっ広い公園。この王都の西部にある色んな人たちが利用する一角だった。場所取りはやってくれていた様で、皆が揃ってカードゲームなどで楽しんだ。
お昼の時間となり、それぞれが持ち寄りを披露する。メリアとイリスは自作のサブレとスフレ。モーリスとセーランは、肉と肉だった。
「男はやっぱり肉だろ。なぁ?セーラン。」
「異議なし。」
こんなところでも、意見が合うらしい。
「アルベルトは?」
「魚の香草揚げ。理由は、フェリシアが食べたがっていたから。それ以外に理由はない。」
「うん、何かアルベルトってブレないな。」
「フェリシア嬢は?」
「俺のリクエストの煎餅だ。」
今回は、海苔味やバジル味なども追加。海老やシンプルな塩味も含まれている。
「えっ、初めて見る・・・何か良い匂いがする。色とか違うけど、どれがおススメ?」
「全部に決まってるだろ。」
「そうね。」
「私も全部に一票。」
友人たちも、アルの意見に賛成。
私は煎餅を食べ慣れているので、今日は満遍なく皆から頂いた。勿論、肉もである。流石高位の貴族だからか、かなり美味しかった。
「う、動けない・・・。」
「モーリスもセーランも食べ過ぎだろ。」