第4章 学園入学
「何も可笑しくない。いつもの距離感だ。教室だからキスしないだけマシだと思え。」
「なっ!?そ、それは流石に遣り過ぎだろ・・・。」
「五月蝿い、お前は小姑か。」
「酷い、アルベルトが俺に冷たい。」
「はいはい、モーリスも揶揄わない。いいんだよ、フェリシア嬢がいいのならそれでいいんだよ。な?アルベルト。」
「幾ら何でも、フェリシアの嫌がることはしない。逆に言えば、教室だろうがキスしたいって言われたらするけどな。」
「い、言いませんからっ!!」
「あ、フェリシア嬢が元気になった。」
可笑しい矛先に向き掛けたので突っ込んだけど、今はアルベルトの傍にいたかった。キスはしないけど。皆もそんな私を見て和んでいた。
視線が合えば、柔かい表情を見せてくれるアルベルト。
「ところで、ピクニックの話しはどうなった?」
そう言えば、私たちで話していたピクニックの会話に、参加して来たのはモーリスだ。結局、何だかんだで六人で行くことになった。
この六人なら、何の問題もない。珍しくアルベルトも反論しなかったので、それなりにモーリスたちのことを認めている事が理解出来てほっこりした。
それぞれに持ち寄りをして、皆で楽しむことになったピクニック。ただ、私はアルベルトからリクエストを受けていた。この時も、急に伯爵家に遊びに来たのだったなぁなんて思い返していた。
「計画通りでいいだろう?」
「そうだな。」
穏やかに会話が進んでいく中、授業が始まった。その頃にはヒロインも戻ってきていた。そして、躊躇なく王子の隣りに腰を下ろした。
あんな露骨に王子と懇意にしているのに、私が王子を好きじゃない方がいいのだと思うのに。あんな会話が成り立たないヒロインの存在が、酷く奇怪で怖くて仕方ない。
「・・・シア?フェリシア?」
急に顔を覗き込まれて、私はハッとした。友人であるメリアとイリスの二人がアルベルトの隣りで気遣わしそうに私を見ていた。
「えっ?あ、授業・・・アレ?アルベルト様・・・。」
「アルベルトでいいと言っただろう?アルでもいい。様付けなんて、他人行儀な呼び方するな。」
そう言えば、今朝、そんなことを言われた。
「アル・・・でもいい?」
上目遣いで問い掛ければ、アメジストの瞳が見開かれ急に顔を背けた。
「・・・フェリシアが可愛い。」