第4章 学園入学
「あの・・・どうか、私とお友達になってくれませんか。」
そんな事を言って、私の腕にしがみついてこようとしたヒロインだったが、アルベルトの手がその手を払いのけた。
「私のものに気安く触るな。」
「べ、別に同性なんですからいいじゃないですか。婚約者だからって、交友関係まで制限するのは可笑しいと思います。」
「可笑しくないに決まっているだろうが。」
キッパリと言い切ったアルベルトに、暫し茫然としていたヒロインだったものの私の友人二人の名を上げて来た。でも、アルベルトは最後までヒロインの存在は許容しなかった。
「フェリシアの事は、私が決める。部外者が口を出すな。」
「ローエン様、こんな事でいいのですか?本当は窮屈に感じていたりするんじゃないのですか?私ならお助け出来ますよ。だから、こんな人との婚約なんて破棄した方がっ。」
その言葉を最後まで発する前に、誰かがヒロインの頬を叩いた。私ではないし、アルベルトでもない。
「男爵令嬢の分際で、言い過ぎだ。お前は何様のつもりだ?」
見下ろす様に冷えた眼差しを向けていたのは、モーリスだった。直ぐ傍には、セーランもいる。
「我が侯爵家から、男爵家に苦情を入れておく。勿論、フェリシアの家からも苦情がいくと思え。」
「ウチの公爵家からも頼んでみようか?」
「それなら、ウチの侯爵家からも構わない。」
「「フェリシアっ!!」」
友人二人の声が重なった。心優しく労わってくれる二人の友人は、ヒロインをキッと睨んだ。
「部外者が知った様な事を言わないで。」
「そうよ。アルベルト様は、フェリシアの嫌がることなんてしないもの。心の底から愛していらっしゃるのだから。」
「嘘・・・どうして?どうして、ローエン様は王子のことが好きに決まっているのに。」
独り言の様に呟くヒロインに、私はゾッとした。
「嫌・・・怖い・・・アルベルト様・・・。」
「おいで、フェリシア。皆も行くぞ。」
その場にヒロインを残し、私たちは教室へと向かい席についた。テスト以外は、自由な配席だ。勿論、直ぐ傍にアルベルトがいてくれる。
「・・・なぁ、分からなくはないけどさ・・・お前ら引っ付き過ぎ。近過ぎだって。ここが何処か忘れてないか?」
「何言ってんだ、モーリス。いつもこうだろ?」
「嫌々、可笑しいって。」