第4章 学園入学
アルベルトがデレたと、揶揄うモーリス。
「アル・・・?」
「今、私の顔を見るのはダメだ。間違いなくキスする。絶対する。あ、嫌・・・キスしたいからワザと可愛い顔をするのか?そうなのか?」
再び私を見詰めたアルベルトが私の顔に近付いて来る。身構えたものの、キスされた場所は額だった。
「アル・・・こ、ここは教室・・・。」
「額なら問題ない。きっとそうだ。」
「何か、アルベルトが可笑しくなってる。」
「モーリス、五月蝿い。」
「仲いいのはいいんだけどさ、そろそろ選択授業だよ?」
そうだったと、慌てて教室から出て行った男性陣。私たちは、調理室へと向かった。子息たちは剣術の授業で、令嬢たちは調理や刺繍の時間となっていた。
今回は、お菓子作り。班毎に自由にやらせてもらえるので、いつも三人で話し合ってお題を決めている。今日は、メリアのリクエストであるフルーツタルト。
そして、私たちは令嬢のおままごとなどではなくガチ勢だった。分担した手際は極めて迅速で無駄がなかった。惜しみなく使った果物がタルト生地の上で綺麗に並べられ、試食する時間も和気藹々と過ごせた。
私はアルベルトに差し入れする為にラッピング。ご機嫌で彼らが受けている広場へと向かった。
「間に合った・・・アルは何処?」
キョロキョロと周りを見回していると、急に背後から抱き締める腕が見えた。
「フェリシア、いい匂いがする。」
「アル、お疲れ様。ハイ、タオル。」
「ありがとう。」
薄っすら浮かぶくらいの汗を拭うアルベルトを、私はジッと見ていた。
「どうかしたのか?」
「えっ?あ、ううん。その・・・アルが格好いいなぁって・・・見てただけ。」
「そうか。好きなだけ見てていい。」
細められた目が、優し気に私を見詰める。
「あ、そうだった。今日の戦利品。」
「有難く頂く。さ、教室に戻ろう。」
当たり前に繋がれた手が、私を引っ張っていく。今はまだ少し見上げるくらいの身長差。でも、数年後には頭一個分は軽く大きくなるアルベルトの身長。
どうか、この幸せがいつまでも続きますようにと私は祈った。