第4章 学園入学
「一言も?」
「あぁ、一言もだ。勝手に向こうは囀っていたがな。」
至極どうでもいいと思っている表情。
「私にはフェリシアだけだ。口付けても?」
「いつもなら断りなんていれないのに。」
「それもそうだな。」
肩を強く抱き入れられれば、十三歳として相応しくないキスをされる。大丈夫、元の私は十八歳だ。大丈夫・・・。
十三歳に負けてたまるかと思ったけれど、今まで勝てた試しがない。屋敷に着くまでイチャイチャの小旅行だ。
「名残惜しいが、到着した様だな。フェリシア?」
「はい?」
「好きだ。」
「ふぇっ!?」
「好きだ、フェリシア。」
額にキスをしてから、屋敷までエスコートしてくれた。これも、いつものお約束になっている。つまり、いつもアルベルトに翻弄されっぱなしなのである。
いつかは翻弄したい。そう決意を新たにする私だった。
その夜。
今日のヒロインのことを思い出していた。どうして声を掛けて来たのだろう?まさか、アルベルトに恋慕を?攻略相手じゃないのに・・・。
明日の朝に直ぐに会えると言うのに、もう会いたい。私を抱き締めて大丈夫だって安心させて欲しい。何処にもいかない、私だけが好きだって言って欲しい。
信じてても、怖いものは怖い。だって、ヒロインが相手だから。それに、機会を伺っているのが王子の存在。ヒロインとはそれなりに懇意にしているものの、仲は進展していないみたいだ。
そして、私の憂いは憂いだけで終わらない。悪役令嬢は、悲しい思いをさせられる運命だと言わんばかりに。
翌朝、いつも通りにアルベルトが迎えに来てくれた。馬車にエスコートされ乗り込んだ早々に、痛い位に抱き締められた。
「アルベルト様?」
「フェリシアがこうして欲しいと思っていると思ったから。昨晩はよく寝られなかったのだろう?」
全て、お見通しである。
「可愛いな、私の婚約者は。」
あちこちにキスされては、私の不安を拭ってくれる。言葉も態度もくれるから、本当に嬉しい。
学園に到着すれば、どういう訳か出迎えたのはヒロインだった。神妙な顔つきで、昨日はごめんなさいと謝罪する。私は吃驚したけれど、アルベルトはどうでもいい顔をしていた。