第4章 学園入学
出席番号でアルベルトの前だったらしいこの人は、モーリス=アンヴィー公爵家のご子息だった。国王の弟の息子で、王子の従兄弟にあたる存在。
でも、王子とはソリが合わないらしく、仲はそれ程良くないらしい。公爵家らしくなく気軽で付き合いやすい相手だったモーリス。因みに、攻略相手ではない。
「なぁ、アイツってあれでバレてないと思ってんのか?」
「あぁ、不愉快極まりないがその通りだ。視線が五月蝿くて敵わん。」
眉を顰めるアルベルトに、愉快そうに笑うモーリス。その話題の主は、あの赤髪攻略者のこと。王子に会いに来ては、こちらをチラチラと見ている。
その視線から遮ってくれる、アルベルトの身体。ここぞとばかりに、仲がいい所を見せておかないと。見せて・・・アレ?私の手の甲に、唇を押し付けるアルベルト。
ジッとを私を見詰める瞳に、私も慣れた様に笑みを浮かべた。私を見詰めてくれる、このアメジストの瞳が大好きだ。
「噂では聞いていたけど、本当お前らって仲がいいな。」
「モーリス、お前の権限で成人が十五歳くらいにならないか?」
「嫌々、幾ら公爵家でもそれは無理だって。って言うか、どれだけローエン嬢に夢中なんだよ。」
「使えないな。」
「酷くないか?俺の扱い。」
なんて、三人で和んでいた。そこへ声を掛けて来たのは、私の友人の二人。二人とも同じ伯爵家で、気兼ねなく仲良く出来るからアルベルトも一目は置いている。
以前、アルベルトに近付きたくて私を利用しようとした令嬢がいたけれど、愛想の欠片も見せることはなかった。そんな出来事も広まって、そういう輩は随分少なくなった。
「あ、いたいた!!モーリスっ。」
「セーラン。久しぶりだな。入学式には間に合わなかったな。帰って来たばかりか?」
「そうだ。って、もう友人が出来たのか。」
「まぁな。で、コイツがセーラン。俺のもう一人の従兄弟。で、コイツがアルベルト。有名人だから知ってるよな?」
「あぁ、勿論。よろしく、俺も混ぜてもらっていいか?」
もう一人のこの人も、人懐っこくて直ぐに打ち解けられた。国王の妹の子息で、侯爵家の後継者だと教えてくれた。そして、隣国に遊学してて帰って来たばかりらしい。そして、彼も王子とはソリが合わないそうだ。