第18章 帰国
「い、一度だけ家に帰りたい。お父様とお母さまに、ちゃんとただいまとアルのところに行って来ますって言いたい。お願い、アル。私の我儘聞いて?お願い。」
アルに詰めよれば、珍しくアルは少し思案して頷いた。
「分かった。やはり、私はフェリシアには甘いな。代わりにこれからは、たくさん愛し合おうな?休みの前日は、夜通しでもいい。」
何か、私の穏やかな人生が終わった気がする。
そんな私に、私の大好きなアルの顔が近付く。
「暫くは、満足に寝かせてやれないからな?」
そんな台詞を、こんな目の前の近距離で言わないで欲しい。そして、手付きが妖しい。次の瞬間、身体が浮かんだと思えばアルの膝の上だ。
「こうしてフェリシアの体温を感じていられるなんて、私は幸せ者だ。好きだ、愛している。」
瞳が甘い。そんなアルの首に腕を回せば、当たり前にキスが降って来る。そのまま馬車の中で、アルに食べられてしまう。
国に到着するまでの間、アルはずっと私にベッタリだった。あんな安定の悪い馬車の中で、何度アルに求められたか分からない。
へとへとで帰国した私。私の両親は笑顔で出迎えてくれたけれど、仕方ないという半ば諦めの気持ちのまま私を送り出してくれた。アルはかなりご機嫌なままである。
クライン家では、アルの両親が出迎えてくれた。そして、私がアルの部屋で生活する事も当たり前だと思ってくれている。いいのか、クライン家。いいのだろうな。
久しぶりの学園生活に戻れば、同衾生活している私たちにそれでこそアルベルトだと笑っていた二人。キャサリンは、温い目を私に向けていた。
そして、新顔のエリシアである。皆が親切にしてくれて、直ぐに打ち解けられた。まぁ、ごく一部からヤッカミはあるけれど放置だ。
久しぶりの王子は、何かやつれていた。私を見た王子は、その瞳に熱を含ませていたけれど、アルに鋭い視線を向けては何故かニヤリと笑っていた。
「バカなヤツで悪いな。」
そう言ったのは、モーリス。セーランも苦笑い。
「ちゃんと始末はするから、今は我慢してくれ。」
どうやら、王子は未だ私を諦めていない様だ。婚約者となった侯爵家の令嬢には、相変わらず冷たい態度を取っているらしい。