第18章 帰国
「親子揃ってバカだよな。」
「えっ、王族相手にそんな言葉・・・。」
「その一言を偶然、セーランの母親と我が母上が耳にして・・・面白い事になっている。」
「面白い事?」
続きを聞こうと、アルの顔を見上げればそれはそれは楽しそうな笑顔を浮かべていたのだけど、目は全然笑っていなかった。
「今一度、聞いていいか?フェリシアは、私の婚約者として私と生涯を共にする覚悟があるんだよな?」
「勿論。」
「私もフェリシアを手離すつもりなど欠片も無い。だが、どこにでもあのバカ王族を推す輩はいる。」
「アル・・・だから私と?」
「嫌、それは私の願望だ。」
「願望?」
「これ以上、今は何も聞かずに私に全てを委ねてくれないか?後悔はさせない。」
頬に触れる柔らかい感触。
「ア、アル・・・一つだけお願いがあるの。」
「何だ?」
「絶対に何があっても、私を手離さないと約束して。約束してくれたら、私の全部アルにあげる。」
アルの瞳が大きくなる。
「約束する。フェリシアは生涯私だけのものだ。」
アルは何処までも優しく私を愛してくれた。最初は緊張していた私も、アルの甘く心地よい声と痺れる様な身体へ与えられる快楽に夜通し身体を繋げた。
そして今・・・ちょっぴり、後悔しかかっている。アルのこと、ちょっと侮っていた。見送りに来てくれていた誰もの視線が、アルに羨望の眼差し&面白そうな眼差しを向けていた。
言えば良かった。嫌、まさかである。流石のアルでも・・・アルだからそういうもの?
「ア、アルベルト・・・昨晩は楽しんだ様だな。」
第一声は皇子の言葉。そして、笑みを浮かべ羨ましいだろうと言わんばかりの表情のアル。
誰も私を見ようとしない。だって、私の首筋から胸元まで存在感たっぷりのアルからの執着の証が幾つも付けられているから。本当に恥ずかしい。
何とも言えない私は、ずっと羞恥に打ち震えているしか出来なかった。二人きりになって出発した帰国までの道中。
アルは突然、こんなカミングアウトをした。
「昨晩は言えなかったが、モーリスが次期国王になる事が決まった。」
私は目を見開いて、アルを見た。
「ど、ど、どういう事?」
「王族としての務めも果たさず、婚約者がいる相手を力技で得ようとする者に誰も付いて行こうとは思わない。女の尻を追い掛けていたのは私ではなくあのバカだよな。」