第5章 宴のあと
〈葉月目線〉
ふと目を覚ました瞬間、違和感がした。
胸元にかかる布。
きちんと整えられた衣。
……けれど。
昨夜の記憶が、途切れている。
「……え」
思い出そうとすると、耳の奥がじんわり熱くなる。
——匂い。
——彼の低い声。
——近すぎる体温。
「……まさか」
「目が覚めたか」
静かな声がした。
振り向くと、障子のそばで光秀さんが立っていた。
いつも通りの冷えた目。
「加減はどうだ?」
「……あの、私…」
私の声が揺れると、光秀さんの目がわずかに細まった。
「覚えていないのか?」
その言い方。
わざとだ。
「な、何か……ありましたか」
すると、一歩。
光秀さんが私に近づく。
距離が、自然に詰まった。
「酒に弱いのに、随分と甘えていたな」
いつもより低い声にドキッとする。
「……甘えていた?」
さらに一歩。
もう逃げ道はない。
壁際まで追い詰められてしまい、光秀さんの手が、壁に触れる。
そう、私を囲うように。