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【呪術廻戦】甘く愛される短編集《R18》

第4章 アングレカム【五条悟・教師編】



「雫…おいで。」

ドクリと心臓が跳ねる。
触れられる…のかな。
言われた通り、先生の真隣に座ると、大きな手が口元に伸びてくる。

キスされる……?

思わず、ぎゅっと目を瞑る。

「…はい、取れた。クッキーついてたよ。」

口端についたクッキーを摘み、ニコリと笑って口に運ぶ先生。

『あ…ありがとうございます。クッキーか…』


「ふっ…なぁに?何か期待したの?」

『そんなことっ…』


それから先生の部屋に何度か呼び出されたけれど、任されたのは掃除やお茶出し、任務報告書、買い物など簡単なものだった。

けれどいつもお手伝いの後にはお菓子を出してくれたり、出張のお土産をくれたり、街で見つけたと言ってピアスや髪留めをくれたりした。

いつの間にか私はその時間を楽しみにするようになっていて、二人でいる時は敬語も使わなくなっていた。

お母さんの所に一緒に行ったこともある。


「お母さん、元気そうで良かったじゃない。」

『うんっ…凄く良くなってるって。治療が効いてる証拠だって。先生のお陰だよ。』


「ふふっ、お母さんが頑張っているからでしょ。」

『それもあるだろうけど。でも…先生ありがとう。』


お母さんの調子が良い事で安心できて、任務も上手くいってるいる。毎日が楽しい。
呪術師だということを忘れてしまいそうな時もある。

ずっとこんな日々が続いていくような気がしていた。




けれどそんな日々は…




あまりにもあっけなく終わりを迎えた。


「雫、お母さん退院できるって。」

『え……本…当…?』


「五条先生のお陰だよ。本当にどうしようかと思ったけれど…退院したら頑張って働いて、恩返ししなきゃいけないと思うよ。」

『そう…だね。』


あれ……?


お母さん退院できるのに…


元気になったのに…


退院手続きや仕事の事、これからの事を意気揚々と話すお母さんの言葉は呪文のようで、頭に全く入ってこない。

心にぽっかりと穴が空いたようで何も考えられないまま、とぼとぼと帰路につく。


「雫っ…」

『……恵』

「今日、病院だって聞いてたから。
ちょうど近くまで来てたんだ。一緒に帰れるか?」

『……うん』

「どうした?元気ない。」

『っそんな事ないよ。お母さん退院できるんだ。嬉しいよ……凄く。』
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