第6章 あの空の向こうで【五条悟・高専編】
( 悟…そろそろ将来の事を真面目に考えんか。そんな様子では私も安心できない。)
「……はっ。うっせぇよ、糞親父…」
ふと、地面から足が離れていることに気づいた。
考え事をしている時はよくこうなる。
もっと自分の力をコントロールしなければ。
それだってわかってるのに…
右手に持っていたアイスが、ポタリ…ポタリと溶けて地面に落ちる。
今日、本家に顔を出した。
理由は簡単だ。定期的に寄れと言われているから。会いたくもない親父にたまたま出くわしてしまい、お小言を頂戴したってわけだ。
勿論俺だって、将来の事を考えていないわけじゃない。
五条家の六眼持ち。自分がこの先どうなるか、わかっているからこそ今はただ、傑や硝子と他愛ない事をしたり、馬鹿話をしたりして楽しみたいのに…
それを許可したのは糞親父だろ…
久々にイライラして、立ち止まる。
「はっ……普通の生活なんてのが無理な話か。」
何もかもが普通じゃない。
体も、家柄も境遇も。
何でこの世には、術師と非術師がいて、呪詛師や呪いがあるのだろう。
久々にガキの頃考えた事が頭をよぎる。
「俺って…非術師だったらなりたいもんとかあったのかな。」
意味のない事を考えるのは嫌いだ。
たらればなんて、もってのほか。
「どーうしちゃったのかねぇ…俺。」
額に手をやる。
何もかもがどうでもいい。
大丈夫、現実と向き合わなきゃならない時期がきたことがわかって、ちょっとおセンチになってるだけ…
「街にでも寄ってくか…」
こんな顔をアイツらに見せて、心配かけたくない。
硝子はともかく、傑にはすぐ見破られる。
駅方面に引き返そうとすると、足に柔らかいボールが当たった。
『っ…すみません。』
公園から飛び出すように、小柄な女がボールを取りに走って来た。
見たとこ俺と同い年…か、歳下か。
後ろには小さいガキもいる。
「危ないよ、こんなとこでボール遊びしてたら。
親が心配するっしょ。」
もっと奥で遊べ、とボールを投げてやった。
女はキョトンとした顔で俺を見た。
「ママ!桜もアイス食べたい!ジュース飲みたい!」
手に持っていた、ほぼ溶けているアイスをゆび指して、ガキが大声をあげた。
「ママ…?」
コイツらの周りには誰もいない。